12/02の日記
09:20
妄想小話 「天の羽衣」
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久々に「サザエさん」を見ていたら、静岡の三保の松原が特集されていました。
世界遺産に登録された、「羽衣の松」でも知られる地ですね(*^^*)
調べてみたら、羽衣の話は全国各地にあるようで、中には天女が地上で生んだ子供が後の琉球王になるという説話もあるとか…
でも、大体「水浴びをしていた天女が漁師に羽衣を盗まれて天に帰れなくなり、仕方なく漁師の妻となって子を産み、やがて羽衣を見つけて天に帰る」というパターンが一番多いようです。
そうしたら、そこからちょっとした恋白妄想が生まれてしまい(゜∀゜;)
女体化&パロという特殊ジャンルで需要は低いかもなので、お話にする予定はないのですが、小ネタとして書いてみます。
天帝・銀嶺陛下が治める天の国。
治安の良い豊かな国であり、人々は平和に暮らしていました。
天帝の孫娘・白哉姫は、美しく教養が深く民への慈しみもある皆の人気の的ですが、強気で意地っ張りなのが玉にキズ。
天帝を敬い、妹のルキアをとても可愛がっていますが、自分の幸せには無頓着で、たくさんある縁談も全く進まず大臣たちを困らせています。
そんなある日、従姉である夜一さんに世間知らずであることをバカにされた白哉姫は、彼女を見返すべく一人で地上へ行ってこようと考えました。
幼い頃から御所から出ることすら稀で、ほとんど使ったことのなかった羽衣をタンスから引っ張り出してきて出かけようとします。
「姉様! 供も連れずに地上界へお出かけなど危のうございます、お止めください!」
「まーったく、いい歳をしてムキになるのう。良い良い、地上はちょうど夏じゃし、美しい浜辺で水浴びでもして来い」
「臨むところだ、化け猫」
「ああっ、姉様ーっ!!」
勢い任せで適当な浜辺に降り立った姉様でしたが、予想以上に景色が綺麗です。天の国には海がないのでとっても新鮮。
そして、姫君様は基本重ね着をしているので地上は暑いです。
「……少しだけ、水浴びをしていくのも悪くあるまい。汗を流すだけだからな」
近くにあった松に羽衣や天の着物を掛け、水浴びをする姉様。
ちょうどその時、海辺を一人の若者 が通りかかりました。
すぐ近くの漁村に住む、若い漁師の恋次です。
「今日はあんま収穫なかったな〜…ん?」
ふと海の方を見ると、この世のものとは思えない美女が裸で水浴びをしているではありませんか。
「おおっ!?」
咄嗟に近くの物陰に隠れ、覗きに徹する恋次。
姉様は初めての海の楽しさと、家臣抜きで一人で自由に遊べる解放感から水遊びに夢中になっており、恋次の視線に気が付きません。
「あんな美人さんを拝めるなんて、一生に一度 あるかねえかだ…このまま帰しちまうなんて勿体無え!!」
恋次は松に忍び寄ると、羽衣を盗み取って持ち帰ってしまいました。
水浴びを終えた姉様が帰ろうとすると、松に掛けておいたはずの羽衣が行方不明。
「…困った、風にでも飛ばされてしまったのであろうか…」
途方に暮れる姉様に、恋次はさも今通りかかったかのように声を掛けます。
「あの…盗賊にでも遭いました?良ければうちで休みません?」
しかし、姉様を目の前にした興奮と初めて盗みをしてしまった動揺により明らかに挙動不審なため、速攻でウソを見破られてしまう恋次。
それでも頑張ってとぼけますが、話し合いによる解決が難しいと踏んだ姉様は、王族の嗜みとして習っていた武術によりとりあえず恋次をボッコボコに。
「いでっ!いででっ!!ちょっ、骨!骨折れるううう!!」
「羽衣を返せ、この窃盗犯!変質者!女の敵め!」
それでも意地になって羽衣の在り処を言わない恋次。
疲れたのと、帰れないイライラからすっかり不機嫌になった姉様は、
「もう良い。ならば私自ら探そう。どうせ貴様の屋敷の周辺に違いあるまい。案内しろ」
既に半殺しだった恋次は逆らえず家まで姉様を案内。
行くあての無い姉様をしばらく置くことになりました。
恋次の家は貧しく、天界での生活のような広いお屋敷はありません。
替えにと用意してもらった着物も、粗末なものです。
天界にいた頃とは何もかもが違う生活に、感覚の差や心細さのあまり姉様は恋次にわがままを言ってしまいます。
「ああ!隊長…じゃない、姫さん!また家中こんなにひっくり返して!」
「羽衣が見つからぬのだ、仕方なかろう」
「ちょっと!何でほとんど食べてないんスか!身体壊しちまいますよ!」
「このような不味い魚が食えるか。飯も稗など口に合わぬ、米はないのか」
強気でお転婆な姉様ですが、近所の子供たちが来ると優しくお話を聞かせてあげたり、忙しい村の女性たちに手仕事を頼まれて慣れないながらも奮闘したりと頑張ります。
そんな一生懸命な姉様に、恋次は気苦労を重ねつつもますますはまっていきました。
ほどなくして、天女が来たという噂を聞きつけた村人たちが家に押し寄せてきました。
「おーい!恋次、噂の天女様はどこだ!?」
「ちょ!一角さん、草鞋脱いで草鞋!!」
「まーったく、相変わらず汚い家よねえ」
「ああ!乱菊さん、勝手に酒持ってかないでください!!」
完全に動物園のパンダ状態になり最初は戸惑っていた姉様でしたが、村のみんなはいい人ばかりで次第に楽しくなってきました。
それから、恋次のお仕事を(多分見た目はしぶしぶ、実際はワクワク)手伝って漁に出たり、他の集落との縄張り争いに巻き込まれて二人で奔走したり、天女だという噂を聞き付けてさらいに来た破落戸から助けてもらったりするうちに、姉様は恋次に想いを寄せ始めます。
破落戸集団は主に破面の皆さんに担当してほしい。
恋次…一人で乗り込んで来るはいいけどボコボコにされるんでしょうね…
「ちっ、しぶてえなこいつ!!いい加減諦めろっつーんだよ!!」
「…グリムジョー、自棄になるのはわかるが外した仮面で叩き殴るのはやめろ。色々と崩れるし若干間抜けな絵面になる」
「恋次!もういい!私のことは放って早く逃げろ!」
「出来るわけねえだろそんなことっ!アンタだけは死んでも守る!!」
その後、村の仲間が応援に来てくれて姉様は無事お帰りに。
そしてある日、恋次は姉様にプロポーズ。
「姫さん…俺んち、姫さんが天界で着てたような綺麗な着物も、豪華な食い物も、立派な御殿もねえけど…それでも、アンタを幸せにすることだけは約束します!だから、俺の嫁になってください!」
「……私が思う幸せは、毎日鯛かふぐが食べられて涼や暖が十二分に取れて、寝るときはいびきがうるさくなくて屋敷は絶対に雨漏りがしないことだが、叶えてくれるのだな?」
「え!?あの、えーと、」
「ふふ…冗談だ。もう以前のようなわがままは言わぬ。お前と、少しの稗や雑魚さえあれば十分だ」
姉様は、もう羽衣を探すつもりはありませんでした。
見つかれば天界に帰らなくてはいけません。それより、恋次に嫁いでこの村で共に暮らすことを選びました。
その後、村中の資金で花嫁衣装も整え、祝言の日も近づいてきた日の夜。
屋根裏に倉庫があるのに気付いた姉様は、上がった先でとある衣装箱を何の気なしに開けてしまいます。
中に入っていたのは、紛れも無く姉様の羽衣…
手に取った瞬間、天界と連絡が繋がり、心配していた夜一さんやルキアの声が。
帰りたくない、と思う姉様でしたが、天帝から天人の掟を説かれ、翌朝羽衣を着て帰ることを半ば強引に承諾させられてしまいました。
失意のうちに屋根裏から降りると、そこには帰宅した恋次の姿が。
「姫さん…」
「―――――――――っ」
思わず恋次に抱きつき泣いてしまう姉様に、恋次は全てを悟りました。
「ごめん、俺のせいだ……あんな羽衣、最初から燃やすなり捨てるなりすればよかった。アンタの故郷や人生を奪っちまうのが怖くて、どうしても捨てられなくて」
恋次もまた、姉様を抱き締めて泣きました。
最後の夜を過ごした二人に、翌朝別れの時が。
姉様は村へ来た日と同じ、綺麗な着物と羽衣を纏って、涙ながらに天へと帰りました。
天の国へ帰ってから、姉様はずっと元気がなく、いつも地上界を眺めて溜め息を吐いてばかり。
あまりにも地上を恋しがるので羽衣も取り上げられ、窓からはるか下界の海を眺めることしか出来ません。
体調も崩しがちになり、心配した天帝が宮廷のお抱え医師・卯ノ花先生に診せました。
すると……
「おめでとうございます。妊娠されていますよ」
何と、恋次との子供を宿していることが発覚。
地上の人間の子供は天界にとっては穢れの対象であるため、姉様は出産のため一時地上へ戻ることに。
再び恋次に逢えるのが嬉しい反面、子供が生まれたらまた別れなければならない辛さもあり、姉様は悩みます。
するとそこへ、夜一さんとルキアが。
「姉様…これを羽織って急いで地上界へお行きください」
「これは?」
「取り上げられた主の羽衣の代わりに、儂等が巫力を込めた布じゃ。ただし、地上までの飛距離ならば片道分の力しかない。…二度と戻ってくることはできんが、いいか?」
「………ああ。感謝する」
姉様は夜一さんとルキアにお礼と別れを告げ、地上へと向かいました。
村へと戻った姉様は、仰天している恋次に子供の報告をします。
「嘘だろ…!?俺と姫さんの…子供が…」
「ああ」
「信じらんねえ…すげえ嬉しい!俺孤児で、今まで家族なんていなかったから」
「私も…なっても良いか?家族に」
「アンタは、もうとっくに家族じゃないスか。
改めて、一生幸せにします…白哉さん」
二人は末長く幸せに暮らしましたとさ。
小話といいつつ結構な長さになってしまった(´∀`;)
私も三保の松原行きたいです☆
☆コメント☆
[西塔] 12-02 16:08 削除
小話って何だっけ?
というレベルです(*´∇`*)
すごく萌えました♪
原作みたいに羽衣盗まれて、漁師にせがまれるままに結婚した天女とは違い、恋次をボッコボコにしちゃう所が何とも白哉さんらしいです(笑)
[繭娘] 12-02 23:34 削除
>西塔さま
ありがとうございますヽ(´▽`)/
萌えていただいて感激です♪
兄様(姉様)は例え羽衣をとられたとしても、請われるまま漁師ごときの嫁になるような方ではないと思うので。
でも好きになったらとにかく一途に恋してしまいます(*^^*)お嫁に行っても力関係は変わりませんが(笑)
[てぃー] 12-03 21:28 削除
萌えました!何というおいしいお話!
天女としての美しさもさることながら、偉そうな(笑)兄様が、そしてけなげな兄様が、ツボど真ん中でした!
どうか末永くお幸せにv
すてきなお話をありがとうございました!
[繭娘] 12-04 00:06 削除
>てぃー様
ありがとうございます。
姉様は偉そうだけど根は優しくて健気なのです(*´∀`*)そして美しい。
だからこそ恋次も手放したくなくなったのですね。
いつまでも幸せに暮らしてほしいものです(^.^)
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