緋衣草〜燃える想い〜
□終章 繋がる想い
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病室の扉を軽く叩くと、中から、
「どうぞ」
と返事が聞こえた。
扉を開けて中へ入ると、寝台の上に、上体を起こした患者服姿の翠玉の姿があった。
「来てくれたのね、……えっと」
「“隊長”で良かろう。今まで通り、な」
「はい。来て下さってありがとうございます、隊長」
「お!思ったより元気そうだな、螺絽」
私に続いて病室に入ってきた恋次が、嬉しそうに言った。
翠玉が藍染に刺されてから、丸一日が経った。
救護詰所に搬送された後、翠玉は四番隊員達による治療を受け、傷は無事処置された。
だが。
「翠玉。実は……」
「ルキアさんから聞きました。あたしの最上級大虚の力……無くなったんでしょう?」
そう言う翠玉の表情は、どこかすっきりとしていた。
刀に塗られていた毒によって翠玉の霊力は削られ、辛うじて消滅は免れたものの、最上級大虚として持っていた能力は全て失われた。
霊圧も、下位の死神にも及ばぬ程微弱なものとなり、今の翠玉は外見通りの、非力な娘に過ぎなかった。
そのことと、彼女が藍染から我々を助けたことを理由とし、私と恋次、そして事情を聞き協力してくれたルキアの三人は、今朝早くに総隊長の下へ翠玉の免罪嘆願に行った。
総隊長も当初は渋っておられたものの、粘り強い説得の結果、しばらくの間は厳重な監視下で生活させるという条件で承諾を頂いた。
「隊長方が免罪嘆願をして下さったんですよね。本当にありがとうございました。……でも、もうこの身体じゃ、護廷隊では働けないですね」
「そのことだが、翠玉。兄は、技局で働く気は無いか?」
「え?」
「涅が、今まで数多の種の虚と相対し、自らも最上級大虚として生きた兄に興味を抱いているのだそうだ。虚の生態や能力に関する情報に加え、六番隊で見せてくれた事務処理能力も買って、とのことだ。死神としてではないが、また我々と同じ護廷隊での職務で活躍できる。どうだ?」
翠玉の表情が明るくなった。
「はい!喜んでお受けします」
「螺絽、俺も暇見つけて会いに行くからさ、頑張れよ」
恋次がそう言い軽く肩を叩いてやると、螺絽は笑顔で頭を下げた。