緋衣草〜燃える想い〜

□第二章 巡る謀略
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「おはようございます」

「おはよう」



「「……………」」


挨拶だけで会話は終わる。俺は黙って机へ向かった。


相変わらず俺の方を見ようともしない隊長を見て、昨日言われた言葉が甦った。


『もう、私に構うな』



その時の、あまりにも切実で苦しそうな表情を思い出す。

何で?

そんな顔をさせてるのは、俺なのか?




しばらくは黙って仕事をしていたが、重過ぎる空気に耐え切れず、俺は口を開いた。


「あの、隊長」

「何だ」

「今日でしたよね、新しい七席が来るのって」

「ああ」

「隊務のこととか俺が説明した方がいいっスか?」

「三席に任せてある」

「あ、そうスか」

「………」

「……あ、えっと」

やばい。

せっかく会話を始められたってのに、またさっきの状況に逆戻りしちまいそうだ。


「えっと、あ、書類多いっスね、ちょっと俺の方に回して下さい」

「自分もそれだけの量を抱えているのにか?」

「う……」

「………」

「あ、あの、隊長」

「恋次」


隊長が、凍てつくように冷たい視線を俺に向ける。


「職務に集中せよ」

「……っ、すいません」



再び訪れる沈黙。俺は思わず溜め息をついた。





今日は、うちの隊に新しい隊員が来る日だ。

細かい事情が分からないんだが、七席だった奴が突然脱退しちまって、その代わりとして異動して来たんだ。

元十二番隊で十席を務めていたが附属機関である技局の仕事を手伝うことが多く、あまり表だった任務には出ていなかったらしい。

だが、死神としての実力や事務処理能力はなかなかのもので、それを見出だされ今回、七席に昇進した上で異動してくるんだそうだ。


今の六番隊トップの事情を全く知らない奴が、この執務室の状況を見たら、すぐに元の隊へ帰りたがったりするかも知れねえ。

何とか普通に接してやらねえと。

問題は、隊長があのピリピリした雰囲気をどうにかしてくれるかどうかなんだが―――
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