主・その他

□誰より近い、あいつ
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「つーかお前、いつになったらルキアとくっつく気だよ」

「ぶっ!?」

隣に座る赤毛の野良犬が放った一言に、俺は動揺のあまり屋根から転げ落ちそうになった。





完現術師による一連の事件が終結し、死神の力を取り戻して数日後。

尸魂界を訪ねていた俺は、帰りの穿界門の準備が整うまでの間、六番隊舎の屋根に腰掛けて辺りの様子を眺めていた。

そこへ偶然やって来た恋次が俺の隣に座り、いつも通り他愛ない話をしていたと思ったら―――



「な、何言い出すんだよいきなり……!?」

「だってよお、お前が死神の力無くす遥か前から、いつそういうことになってもおかしくねえ感じだったろ?1年半ぶりに再会できて、見たところまだお互いの雰囲気も変わってねえってのに、まだ何もしねえ気でいるのかと思ってよ」

恋次は心底呆れたように溜め息を吐く。俺は大きく崩した体勢を整え直しながら、尋ね返した。

「冗談だろ?ルキアはそんなんじゃねえ、大事な仲間だ」

「だから、いつまでその建て前にしがみつく気なんだっつの。あれだけお互い気に掛け合っといて……気づいてねえのは当事者であるお前らだけだろ」

「んなこと……」

俺は思わず言葉に詰まった。


確かに、ルキアとの間には切っても切れない絆がある。共に戦ってきた時間はまだ短いが、俺が死神になるきっかけを作り、それ以来どんな時も隣で俺の力になってくれた。

今回だって、俺に死神の力を取り戻させるため、護廷隊を巻き込み力を尽くしてくれたんだ。

女としても、美人だし意外と繊細なとこもあるし、普段はボーイッシュな癖にたまに見せる女らしい表情にも惹かれる。

それに……恋次と並んでガキの頃の話なんかしてたりするのを、面白くなく思っている自分にも、薄々気付いていた。



「けどよ、ルキアはあの通り男にまるで興味無しのじゃじゃ馬だぜ?俺のことそんな風に見てるわけねえだろ」

「馬鹿かお前?あいつああ見えて結構乙女なんだぜ、現世の恋愛漫画なんかも買い漁ってるしよ……それに元がどんな性格であれ、若い男と女が長く一緒にいりゃ、大抵何かあんだって」

急に大人ぶり始めた恋次に、俺は少しむっとして言い返した。



「そんなら、お前とルキアだって同じだろ?俺が来る前はお前が一番あいつに近かったわけだし。けど結局お前らの間には何も無くて、現にお前にはもう他に恋人がいるじゃねえか」

今度は恋次が屋根から転げ落ちそうになる番だった。

「なっ!?おま、お前、何でそのこと知って………!!」

「夜一さんと浮竹さんから聞いたんだよ。つーかお前、付き合ってんのにまだ名前も呼ばせてもらってねえわけ?」

「呼べねえんじゃなくて呼ばねえだけだ!!って……んなことは良いとして」

恋次は照れ隠しのように髪を乱暴に掻き乱す。

「あのなあ、俺とルキアは家族だっつの。恋愛とかそんな次元以前の関係だろ。お前らみてえに、出会って間も無えのに誰より必要とし合ってる奴らとは違うんだよ」

「必要と……し合ってる……」

恋次の言葉を、自分の中で反芻してみる。



間違いじゃない。俺にとってルキアの存在は、今や必要不可欠だ。

ルキアも同じように思ってくれてるかは分からねえけど……少なくとも、今の俺にとっては、あいつは誰より信じ合える女だと思う。

でも、それが恋愛感情に直結するのかどうかははっきりしない。

今までも、もしかしたら……とは思ってたが、俺の中途半端な思い込みのせいであいつを困らせちまったらと思うと、自分からどうこうする気にはなれなかった。

けど………そろそろ決着つけなきゃ、なのかな?





「一護!こんな所に居ったのか?」

俺が柄にもなくぐるぐる考えていると、正にその原因となっている相手が現れた。

「おわっ!?ル、ルキア!?」

「何だ、変な奴だな。霊圧を感じたから来てみただけだというのに」

「あ、ああ……」

俺は思わず目を逸らしてしまう。

(畜生……恋次が変なこと言うから、ルキアの顔まともに見れねえじゃねえか!!)

俺は顔に熱が集まるのを感じた。

「一護?どうしたのだ、何処か具合でも悪いのか?」

「い、いや、別に何も、」

心配そうに顔を覗き込んでくるルキアから、俺は必死で目線を逸らしつつ平静を装う。

「気にすんな、発情期特有の悩みってやつさ」

済ました顔で言う恋次を、本気で殴りたくなった。
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