小説2

□『片目』と『クズ』
1ページ/8ページ

いつものように、馴染みの酒場で飲んでいた。
相手は――ギアッチョじゃない。こんな薄汚い店にあの子は連れてきたくない。
ジャーダ。長年この界隈で『何でも屋』をやっている胡散臭い女だ。昔からの友人。
「あんたがさぁ、前みたいに男の子買わなくなったから…ふふ。良い客だったんだけどね、あんたは」
「そうか?まぁ他にもこの辺りにはいるだろう?若い男の子を好む変態なんてさ、いくらでも」
「いるよ。いるんだけどね、あんたみたいなマトモな客は、なかなか」
マトモ、との言葉に笑ってしまう。俺が?
「面白い事を言うなお前は。俺みたいなクズはなかなかいないぞ、知ってるだろ?」
「タチの悪い奴が多いんだ。ヤるだけヤって金を払わないで逃げやがったりだとか…変態通り越して、イカれた奴もいる。金髪の可愛い子がいたんだけどね。その子は客にシャブ打たれまくって…今は病院さ」
「…あぁ」
まあ、確かにそういう点じゃあ俺はまだマシなほうなのかも知れない。
正直、金で買える男の子なんてそこまで大事にはしないが、かといって、そう邪険に扱ったり、ましてや強引にドラッグ…考えた事もない。
ジャーダはまだまだ飲み足りないと言うので、(本人は否定するが、彼女はアル中だ)一人残して先に店を出た。
この辺りにはジャーダの『商品』の男の子がうろついている。過去に買った子に出くわした。
タバコをふかしながら、笑顔をくれる。可愛い子ばかりだ。だが、もう買う事はない。ギアッチョにバレると面倒だ。
地元の男の子とは、もう極力関わらないように――。そう決めていたのだけれど。
一人の少年に、つい目を引かれた。良い意味でも、悪い意味でも。
初めて見る顔の子。栗色の髪と瞳。なかなか可愛い顔をしてる。
が、可愛らしすぎる。ようするに、まだガキなんだ。160センチあるかないか、くらいの小柄な体。中学生にしか見えなかった。
俺に声をかけようと少年は歩み寄ってきたが、断った。残念そうな顔を見せるその子に背を向けると、汚ねえ街から立ち去った。


あと2、3年すりゃあ俺の好みになるかもな。
その時は、本当にそれくらいしか思わなかったんだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ