パロディ小説

□猫との生活。「拾っちゃいました」
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しばらく任務のない暇で平和な日々。
ある日の夕方、煙草を買いに出た俺が、自宅に向かう途中。

「にゃっ、にゃっ。うにゃーん」
それは、突然俺の目に飛び込んできた。
「にゃーにゃにゃにゃ…」
道端にしゃがみこんで、薄汚れた小さなボールで遊ぶ、幼児。
3歳くらいの男の子。
淡い色のブラウンの髪は、クルンクルンの癖の強い巻き毛。真っ白い肌に、大きな瞳。赤いフレームのお洒落な眼鏡。タートルネックの白いシャツの裾はヒラヒラで、まるで妖精みたいな格好だ。
「うにゃ?お兄ちゃん誰にゃー?」
ただ、その子が普通の幼児と違う点。
柔らかそうな巻き毛から、真っ白い猫の耳が覗いている。そして同じく、ストライプ柄のズボンのお尻には、ふわふわの白い尻尾。
俺もその場にしゃがみこみ、坊やに目線を合わせた。
「やぁ、ニャンコ」
「にゃあ?」
「こんなトコで一人で何してるんだい?お母さんは?」
「にゃー。俺、母ちゃんいないにゃっ」
…母を亡くした野良猫か。ボールを抱えて、無邪気に俺を見るその子を見て少し胸が痛んだ。
「お兄ちゃん綺麗な髪の毛にゃー」
「ん」
その子は小さな手で俺の髪を掴み、珍しそうに撫でていた。
「ふにゃっ!俺の髪と全然違うにゃー」
「そうだねー、お前のはクリンクリンだもんね」
同じく俺も髪を撫でてやる。指に絡みつく巻き毛は見た目通り柔らかい。本物の猫にするように、頭や額を指先で撫でてやると、気持ちよさそうに目を閉じて微笑んだ。
…可愛い。
「腹へってないか?」
「にゃあ。ミルク飲みたいのにゃ」
「おいで。ミルクもあるし、ご飯作ってあげるよ」
チビ猫を抱えあげると、俺はそのまま自宅まで連れて行った。


「美味しいにゃー」
砂糖入りのホットミルクを飲ませてやると、満面の笑顔。
駄目だ…なんていう可愛さだ。猫らしい、少しキツい釣り目をしているが、笑うとくしゃくしゃな表情になるのが堪らない。口の周りについたミルクをタオルで拭ってやる。
「オムライスも美味しいにゃあ。お兄ちゃん料理上手なのにゃ」
「そうか?良かった。あっ…お兄ちゃんの名前はね、メローネって言うんだ。お前は?」
「ふにゃ、めろーね?俺名前ないにゃ」
…そうか、野良なんだから名前なんてないよなぁ。
「お前、俺んちの子になるかい?」
「うにゃっ?」
…軽はずみに飼い始めるのも自分でもどうかと思ったが、この子の顔を見ていると、たまらなくなった。一人で暮らすのは、たまには寂しくなる時があるんだ。
「俺、ここに住んでいいのにゃー?」
「ああ。名前も、また考えてあげるよ。俺の子になるかい?」
母のいない野良の子猫が、一人で生きていくのは辛いだろう。ここなら、毎日暖かいご飯を食べさせてあげられる。
「うーん…どうしようかにゃ」
「すぐに決めなくてもいいさ。まあ、今日はうちでゆっくり遊んでいきなよ」
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