パロディ小説

□猫との生活「連れていかれちゃいました。」
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「ふにゃん。にゃんにゃにゃーん」
ご機嫌でミニカーで遊ぶベビッチョ。買い物から帰宅したメローネは、その愛らしい様を目を細めて眺めた。
「ただいま」
「おかえりにゃんー!」
「アイス買ってきたよ」
足元にまとわりついて、膝に頭をすり寄せる仕草は本物の猫そのもの。
スーパーの袋から取り出したアイスクリームを渡してやりながら、メローネは二人の兄がいない事に気がついた。
「兄ちゃん達は?」
「ギア兄ちゃんはメローネの部屋でねんねしてるにゃ」
やはり猫らしく、ギアッチョは日中の大半を眠って過ごす事が多い。だが、アイスとなると飛んでくるショタッチョまで姿を見せないのは妙だった。
「ショタッチョは?」
「えっとね、さっき一緒にショタ兄ちゃんと公園行ったんだけどにゃん」
たどたどしい手付きでアイスの蓋を開けながら喋るベビッチョ。
「兄ちゃんね、知らないお兄ちゃんに連れて行かれたのにゃーん。アイス美味しいにゃ」
どさん、と鞄を落とすメローネに驚いて顔を上げるベビッチョ。
「なんだってー!?」


それは、今から一時間ほど前のこと。
ショタッチョとベビッチョは、公園で仲良くボールで遊んでいた。
「兄ちゃーん。ボール遊び飽きてきたにゃん。また兄ちゃんの『ぶゆうでん』聞かせてにゃん!」
「よし!野良猫やっつけた時の話聞かせてやるにゃん!」
そして二人がベンチに腰掛けて、野良猫と喧嘩した話だの、ギア兄ちゃんはもっと強いだのと盛り上がっていると。
「坊や達、可愛いですね」
「ふにゃん?」
ふと見ると、背中まである銀色の髪の、褐色の肌の男が立っていた。
「ふふ、そっくりですねぇ。兄弟?」
「うん。こいつ弟にゃん」
「にゃーん」
彼はベンチの前までやってくると、小さなベビッチョに目線を合わすためにしゃがみこんだ。
「猫ちゃん。可愛いなぁー」
そう言って微笑むと、ベビッチョの頭を優しく撫でる。
「ふにゃん」
「あっ、いいにゃあ。俺もー!」
甘えん坊のショタッチョが、すかさず自分もとねだると、彼は同じようにショタッチョも撫でてくれた。
「髪、ふわふわですね。触りごこち良いなあ…」
「ふにゃー、ねえねえ」
「うん?」
その様子を見ていたベビッチョは不思議そうな顔をして、彼に話しかける。
「男にゃん?女にゃん?」
「あはは、男ですよ!ティッツァーノといいます。ティッツァって呼んでくださいね」
ベビッチョが困惑したのも無理はない。彼、ティッツァーノは細い眉に大きな瞳、ふっくらした唇と、非常に女性的な美しい顔立ちをしていたが、それでいて長身で、非常に中性的な魅力に包まれていたからだ。
「俺ベビッチョにゃん」
「俺はショタッチョ!」
「ベビッチョちゃんに、ショタッチョちゃん…」
ティッツァーノはベビッチョも胸元に抱き寄せた。
「二人とも、うちに遊びに来ませんか?」
「えっ…」
ニコニコと微笑みながら二人を見るティッツァーノ。ショタッチョは、その笑顔に幼い頃に亡くした母猫を思い出した。
「行くにゃん!」
「よしよし…すぐ近くなんですよ、おいで。ベビッチョちゃんは?」
「うーん…」
ベビッチョは、そういえばメローネがアイスクリームを買ってきてくれるのだと思い出した。
「俺はやめとくにゃん」
「そう?」
「うん」
ショタッチョは、弟を誘おうとはしなかった。そのほうが、自分一人でこの優しいお兄さんを独占出来ると考えたからだ。
「じゃあな、ベビッチョ。ばいばいにゃーん!」
「ばいにゃん」
そして、一人残されたベビッチョ。事態がよく分かっていない。
「おうち帰るにゃん」
そしてボールを抱え、てくてくとメローネの家に向かって歩きだしたのだった。
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