パロディ小説

□日本むかしばなし〜雪ん子〜
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「あぁ、よく冷えるな」
その年は、例年より一層雪の降る冬でした。
山奥の村に暮らす瓜太郎は、半纏を羽織り、火鉢にあたりながら呟きました。
外は風が強く、古い家の戸がガタガタと音を立てています。


夜も更け、瓜太郎がそろそろ寝ようかと思った頃。風もやみ、静まり返った外から物音がします。
こんな夜更けに客人が?不審に思った瓜太郎が戸を開けると、暗い景色の中、木陰に隠れる少年の姿。
瓜太郎の事をじっと見つめる少年は、驚いた事に白の薄い着物一枚と、裸足に草履姿だったのです。
「お前、そんなトコで何をしてるんだい」
声をかけると少年は、大げさにビクンと体を震わせました。
「どこの子だ?」
瓜太郎を凝視しながら、少年は恐る恐る口を開きました。
「お前、オラが見えんのかぁ?」
「うん?」
質問の意味が分からない。少し戸惑った瓜太郎ですが、この大雪の中、そんな格好では命に関わります。
「入れよ、暖かいぞ」


家の中に入ってきた少年は、所在なさげに立ち尽くしていました。
「ほら、風邪をひく」
瓜太郎が自分の半纏を脱いで着せてやり、火鉢にあたるように促すと、少年はボソッと「オラ寒くねえぞ」と呟きます。
不思議に思った瓜太郎が頬に触れると、この寒さの中、少年の頬は暖かく、全く冷えた様子がないのです。
歳は15、6でしょうか。柔らかく、癖の強い巻き毛。猫のような凛とした眼差しに、女の子のような白い肌の少年。
瓜太郎はふと、幼い頃に祖父から聞いた話を思い出しました。
「お前、雪ん子ってやつか?」
瓜太郎の問いに、少年はこくりと頷きました。
子供だましの、ただの昔話かと思っていた雪ん子が、本当にいるなんて。驚いた瓜太郎でしたが、火鉢で温もり、ほんのり頬を赤くした少年は可愛らしく、とても…でぃ・もーると瓜太郎の好みでした。
「まぁ座れよ。もう遅いし、泊まっていくといい」
「…お前、オラが怖くねえのかぁ?雪ん子は、山の妖怪だぞ」
ちょこんと座った少年は、くりくりとした目を向けて瓜太郎を見つめます。
「可愛いもんだ。お前、名前は?」
「千代助。ちよすけ、だ」
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