パロディ小説

□素顔
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「スッピンがさ、見たいんだよね」
恋人、メローネの発した言葉が頭の中をグルグル巡っていた。
付き合いだして、数ヶ月。未だに…あたしはコイツに素顔を見せた事がない。
会う時は必ず化粧して行くし、二人の仕事の時間がバラバラだから、泊まった事もないしな。
あたしの素顔。
見られたくない。
はっきり言って全然可愛くなんてないんだ。それに…

「お前、もともと目はデカイだろー?色も白いしさ」
「ん…まぁ目はデカイよ。目付きは悪いけど」
「化粧落としても、あんまり変わらねぇと思うんだけどな。スッピン見たいなぁ」
…また言うか。どうやらメローネは、あたしの素顔が見たくて堪らないようだった。
「そんな隠さなくたって良いじゃないか?てか、今日も俺んち来るだけなんだから化粧なんかしてこなくていいのに」
化粧しなくていいのに!?それは…お前だからそんなこと言えるんだ!
女みたいなデッカイ目に、まつ毛は長いし、悔しいくらい肌も綺麗で。
それに比べて、あたしは…!
「なぁ、今日は泊まってけよ」
「え…」


シャワーを浴びながら、イルーゾォに言われた事を思い出す。
「見せちゃえば良いじゃん」
「お前、そんな簡単に言うなよ…」
「えー、でもこのままずっと見せないでいるって無理でしょ。どうせいつかは見せるんだから、それだったら早いうちに見せたら良いと思うけどなぁ」
うう…。イルーゾォは、綺麗な顔をしてる。
服装も髪型も地味なものを好むイルーゾォは、化粧にもこだわりがなく、スッピンの時も多い。化粧したとしても薄化粧だ。元の目鼻立ちがはっきりしているうえに、薄化粧だから、化粧後も素顔も、たいして変わらない。
…羨ましい限りだ。
何であたしの周りはメローネといいイルーゾォといい、やたら美形が多いんだ!

部屋着に着替えて、洗面所の鏡を覗き込む。
普通にしてても「怒ってんの?」とよく聞かれる、きっつい目。薄い眉毛。肌は白いけど、そのぶんソバカスが目立つ。
この顔を…メローネに見せるのか!
やっぱり迷う。
サッとファンデとアイラインだけでも…。
いや、駄目だ。
イルーゾォが言ってたように、いつかは見せるモンなんだ。それなら、もう今見せちまったほうが…!


「お待たせ。メローネも…風呂入ってきなよ」
恥ずかしくて、真っ直ぐコイツのほうを向けない。
なんにも言ってくれないモンだから、恐る恐る顔を上げたら、煙草をくわえたまんま、あたしの顔を見つめてた。
なんなんだよ、そのポカンとした表情…!
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