小説

□それは、お互いとても不器用で
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あれから…くそったれの、淫売を殺してから、数週間。
例によって、俺はギアッチョの家で二人でくつろいでいた。
「まだ終わらねぇの?それ」
「うるっせぇなあ、ちょっと待てって」
ソファーに二人並んで座り、ゲームに夢中になっているギアッチョに声をかける。彼が最近買ってきたRPG。日本のゲームらしいが、CGのキャラクターはとてもリアルで、なんだか映画を見ているみたいだ。俺はゲームなんてものは、よく分からない。熱中して、テレビ画面の中のドラゴンを必死で倒そうとするギアッチョは、なんだか子供みたいで可愛い。
「あ、もしかしたら勝てるんじゃねえ?やばい、初めて勝てるかも今回!」
彼は嬉しそうにはしゃいでいるけど、俺には画面を見てもそれがよく分からない。
見ていても退屈なので、彼の横顔を眺める。目を輝かせて、にんまりした顔でコントローラをガチャガチャいじる様子が、無邪気で本当にベネ。
すさんだ気持ちを安らげてくれる一番の薬は、こうして彼と過ごす事。
そんな事を考えていると、途端に彼の表情が曇りはじめた。
「え…嘘だろ、マジかよ!おい!!」
画面に目をやると、主人公の倒れてる姿がアップになって、教会に場面は切り替わる。へえ、ゲームの世界じゃあ死んでも生き返るのか。便利なモンだ。
「あー!また負けちまった!今のは勝てそうだったのに何でだよっ!なあ見てただろ!?」
「いや、よく分からねーから見てなかった」
「あー…」
「ゲームより、アンタの顔見てるほうが好きだし」
途端、呆然と間抜けに口を半開きで俺の顔を見つめる彼。ああ、すぐ真っ赤になるんだよなあ。本当に…
「可愛い」
「可愛いって言うな!」
「はいはい、ああコントローラ投げつけちゃ駄目。今まで、もう3つも壊してるだろ?ギアッチョ」
ほら、と抱き寄せてやるとおとなしくなった。
「…もうセーブしてやめる。クソッ」
「よしよし。いつか勝てるって」
「よしよしとか言うな!ガキ扱いするな!」
ふてくされて、俺の胸に顔を埋める。
柔らかい巻き毛に指を絡めて、うなじにチュ、チュ、と唇を落とすと彼の体がビクンと軽く跳ねる。
「感じやすいよなぁ、しかし」
「…くすぐったいんだよ!」
耳まで真っ赤じゃねえかよ。恥ずかしがり屋なんだよなあ。
「本当に?くすぐったいだけ?」
そのままシャツの中に手を入れ、胸に手を這わすと、微かな声を漏らした。
「くすぐったくないだろ?感じてるだろ?」
「…てめーっ!」
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