小説

□レディ・キラーズ
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静まり返った深夜の自室。俺のベッドで寝息を立てている女の顔をチラリと眺める。
クーラーをつけるほどの暑さではなかったが、寝汗で額に髪がべったりと貼りついていて、ソバカスのある頬は赤く染まっていた。
醜い。
数ヶ月前に、酒場で声をかけた女。その時は、そこそこの女かと思ったが、厚化粧を落としてみれば、見れたモンじゃあなかった。
まあ、あの紫色の痣が消えたぶんだけマシか。ついこの前までコイツのツラは、さらに酷いモンだったから。
痣。DVの被害にあう女ってのは、どいつもこいつも馬鹿女ばかりだと思う。尻軽で、簡単に股を開く癖に何度か相手をしてやれば恋人ヅラをする。馴れ馴れしい態度は日に日に俺をイラつかせる。ついカッとなって手をあげちまったら、ヒストリーでも起こしたように泣き喚くが、少ししてから機嫌をとってやると、痣だらけの顔で俺にすがってくる。
俺に飽きたら、また同じようなクズ男の元に行って股を開き、時には殴られるんだろう。
馬鹿みたいな、無限ループ。

低温の冷たいシャワーを体にぶつけても、気分は晴れなかった。
よく、『俺はいったい何なのか』という事を考える。
周りの連中は、よく俺の事を『セックス依存性の変態』だと笑う。間違ってはいない。相手は男でも女でも、誰でも良い。酒場で。街中で。時には、変態が集まる特殊な店で。目の合った奴に声をかける。
これだけなら、周りの言うようにただのセックス依存の馬鹿野郎なんだろう。
だが自分でも理解出来ないのが、何故俺はわざわざ『イラつくタイプの』女にばかり声をかけ、関係を持ち、あげく殴り倒すのか。
声をかけてきた男に、たやすく着いてきて股を開く女。酔っ払ってはキャンキャンわめく馬鹿女。まるで、大嫌いだった母親のようだ。
意図的に、母親と同じ類の女ばかりを選んで、好きなだけ性欲の捌け口にして、殴る。
何の意味があるっていうんだ。
何度、自問自答しても分からなかった。
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