小説

□南の町と、笑顔の君と
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「遊びに行こーぜ」
唐突に、変態野郎が言い出した。
その日、俺とメローネは休日で、アジトで暇を潰していた。さっきまで一緒に過ごしていたプロシュートは任務のため出ていって、今ここにいるのは俺達二人きりだった。
「遊びにって、ドコに…」
「天気も良いじゃん?行こうぜ」
正直、あの日以来メローネと過ごすのは少し気まずかった。男に…まさか野郎に『ヤられちまう』事になったのは、俺の中でかなり衝撃的で。でも、不思議な事に俺はコイツの事を避ける気にはなれなかった。
自分でも有り得ない、と思ったのだが、メローネと一緒にいると、荒んだ気分が少し和らぐ自分に気付いた。幼い子供を手にかけて、潰れちまいそうになっていた心は、だいぶ落ち着いてきたが、間違いなく、この男のおかげだった。
「今日は俺の車で行こうぜ」
車のキーを手に取って部屋を出るメローネに、俺は黙って付いていった。
「ちょっと南のほうまで行こうか。明日も休みだろ?ドライブがてら、遠出しようぜ」
運転席に乗り込んだメローネはそう言いながら、車を出した。
コイツが車運転するの見るのは久しぶりだな。いつもはバイクなのに。ちらり、と隣のメローネを見ると、横顔は、やっぱりいつも通り綺麗で。
いや、待て。なんで俺はコイツの事を綺麗だとかそんなふうに考えはじめちまうんだ。この前の『アレ』は俺も酔ってたし、事故だ事故。ありえねえ!
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