小説

□poor dog
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とある日の午後。
メローネは、退屈していた。
バイクで街をうろつき、お気に入りのブランドの店にも入ったが、これといって欲しい物もなく、このまま適当にぶらついて、好みの女でも見付かれば声をかけようか、と思っていた頃。

そういえば、ここからは『あの男』の家も近い。

そう気付くとメローネは、彼の家に向かってバイクを走らせた。


『彼』の家は、郊外の静かな場所にあった。
豪邸、とまではいかないが、白い壁に広い庭を備えたその家は、主はそれなりの人物だという事を思わせるだけの立派さを持ち合わせていた。
念のため、彼に電話をした所、
「悪いが今は出かけている。だが、勝手に入ってくれて構わない。私は夕方には帰るが、『あれ』を一人で留守番させている。よければ相手をしてやってくれないか」

玄関の扉は旋鍵されていたが、『物質の形を組み換える』能力のスタンドを持つメローネにしてみれば、鍵など無意味であった。

玄関から広い廊下を抜け、慣れた足取りでリビングに向かう。

最新型のテレビと、洒落たテーブルにソファー。
大きな窓にかかったカーテンの隙間から、午後の日差しが僅かに漏れていた。
どこにでもある、ありふれた部屋。
だが、日常の風景を壊す、この穏やかな空間には似つかわしくないモノが、ここに居た。
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