小説2

□小さな恋人
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「ギアッチョ、ギアッチョ」
キスで目覚める。ああ、朝飯を作ってやらなくちゃ。
「ギアッチョ。おはよう」
甘いけれど、少し低い声。シャネルの香り。…まだ眠いんだ。
えっ…?
「見てみろよ、ギアッチョ」
「お前…!」
いつもの、メローネだった。にっこりと微笑む余裕げな表情。広い肩幅。顔にかかる、垂らした前髪。ちらりと、淡い水色の右目がのぞいた。
「メローネ!メローネ!」
ガバッと起き上がった俺は、勢いよく彼に抱きつく。強く抱き締め返してくれるその力は強く、あらためて大人だと感じさせられ俺は安心する。
「心配かけちまったな、ギアッチョ」
「よかった!本当よかったよ、メローネ…!」
「今朝起きたら、戻ってたんだ。よかった…ギアッチョ、ギアッチョ、ああ泣くな」
また泣いてしまった俺にキスをくれる。子供のキスじゃあない。深く唇を重ねるけれど、とても優しいキス。
「メローネ、俺…俺、あぁ本当に好きだ…」
「俺も愛してるよ、ギアッチョ。子供の俺でも愛してるって言ってくれたね。ディ・モールト嬉しかった」
そのまま二人、ベッドに腰かけると、俺の頭をずっと撫でてくれる。
「子供のお前も可愛かったけど…やっぱり大人がいい」
「そりゃあそうだ。子供の姿じゃ、こうやってあんたを抱きしめてやれないだろう」
肩に回された手は、女みたいにキレイだけど俺の手より少し大きいし、背だって俺より高いんだ。
よかった、本当によかった。いつもの、俺の大好きな格好いいメローネ。
「ギアッチョ、ガキの俺に優しくしてくれたね。あんた、良いお母さんだったぜ」
「お、お母さん!?」
「ははっ!風呂に入れてくれたのは嬉しかったなぁ。ギアッチョが俺の体洗ってくれるなんてさ。うん、嬉しかった」
急に恥ずかしくなって赤面した俺を、頭をポンポンと撫でてあやしてくれる。
「メローネ…」
再度抱きつく俺の頬を、背中を、全身を撫でてくれるのが嬉しかった。
「不安だっただろう。いっぱい甘えさせてやるよ」
メローネ…。そんな事言ってるけど、お前だって怖くてたまらなかったんだろう?
本当に、こいつは俺の事ばっかり。
「小さいメローネ、可愛かったぜ」
「ありがとな。お前が可愛がってくれて本当嬉しかったぜ」
「なぁメローネ」
「うん?」
「たまには…お前も甘えてこいよ。ガキの時みたいにさ」
驚いた顔を見せたメローネは、またキスをくれた後、俺にもたれかかってきた。
「じゃあ、たまにはあんたにマンマになってもらおうかな」
俺の膝枕でそんな事を言うメローネの髪を撫でてやる。
…たまに膝枕してやると喜ぶんだよな、こいつ。
「またあんたの料理が食べたいな」
「ほとんどお前が作ったんじゃないか」
「ん、また一緒に作ろう。ギアッチョ、俺もあんたの事、ずっとずっと愛してるよ」



END
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