小説2

□小さな恋人
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「俺、子供に戻れてちょっと嬉しいな」
食べ終わると、行儀よく椅子に腰かけたメローネはそう言って微笑む。
「両方の目で、ギアッチョを見れるから」
「あっ…」
そう。メローネの右目。左目と同じ、深い海のようなブルー。
その綺麗な瞳には、俺の顔が映っているのだ。
失明する、前なんだ…。
「母さんに殴られて見えなくなったのは10歳だったから…この時は、まだ見えてたんだ。ギアッチョの顔、よく見えるよ」
「そうか。そうだな、オイ…前髪で隠れてたから、わかりにくかったぜ。どうだ?元通り見えるようになって」
「急に視力が戻ったから、最初は逆に気持ち悪かったけど…やっぱり、見えるのは良いね!今の髪型のまんま子供に戻っちゃったんだなぁ…。前髪切ろっかなぁ。オッドアイを隠すために伸ばしてたんだけど、今は右目隠さなくても良くなったし」
「前髪邪魔になるな?くくっとけ」
ゴムで上手くまとめてやろうとしたが、なにぶん俺は髪なんてくくった事がないから、うまく結べない。
「ふふっ。貸して、ギアッチョ。んー、手が小さくなったから、なんかやり辛いや」
たどたどしく自分で髪を結ぶ。ところどころほつれているが、俺がやるよりは、ずっと上手だ。
器用でしっかりしてる。小さくても、やはりメローネなんだ。…当たり前だけど。
髪をまとめると、顔の小ささと可愛らしさが際立つ。つい見惚れてしまう。
「なぁに?ギアッチョ、ペドの趣味でもあるの?」
「バカ!」
すっかりいつもの調子のメローネに、俺もなんだか安心させられた。


その日は風呂に入れてやり、アニメを見せてやるとうとうとし始めたので俺のベッドに寝かせてやった。
天使みたいな寝顔を見つめていたが、その日の俺はとてもじゃないが眠れそうになかった。
「あっちょ…ぎあっちょ」
寝言で俺の名前を呼ぶ。指を吸う癖があったなんて知らなかった。こいつが大人に戻ったら、からかってやろう、なんて考えた。
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