小説2

□小さな恋人
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「マジかよ…どうすりゃ良いってんだ」
灰皿代わりのコーラの空き缶に煙草を押し付けて、壁をぶん殴った。
ずきずき痛む拳。どうだっていい。今の現実に比べれば。
「ギアッチョ」
振り返り、俺を呼ぶ者を見る。
「大丈夫だから。きっと、一週間ほどで戻るって。怪我するよ?そんな事…」
不安げな眼差しで俺を見上げる幼児。5、6歳といった所だ。サラサラの金髪をアシンメトリーにカットした、青い瞳の少年。はっと息を飲むほど、美しい子供。
「心配かけてゴメンね」
「…メローネ」


そう。俺の恋人…メローネは、敵のスタンド攻撃により、幼児の姿に変えられてしまった。記憶はそのままだが、頭ん中まで幼くなってしまってる。
リゾットいわく、この敵の能力は一週間ほどで解除されるようだが、たまったもんじゃあない。
「ギアッチョ、あの…」
「ああ?」
「お腹、すいちゃった」


マックで買ってきたハンバーガーを食わせながら、考えた。
しばらくすれば戻るのなら、そう悲観する事はない…ないのだが。
まさか、メローネがこんな事になってしまうなんて。ベイビィフェイスのスタンドだって、使えなくなっちまってるし、今、敵に襲われようモンなら、危ない事このうえない。なにしろ、ただのガキなのだから。
「ギアッチョ」
「なんだ?」
「俺ね、怖くないよ」
「…何が?」
「リゾットにも言われたんだ。その姿じゃ危ないって。でも、ギアッチョが守ってくれるよね?だから俺、何も怖くないの」
無邪気にそう笑い、オレンジジュースのコップを両手できゅっと握った。
「そうだな」
気付くと俺は、この小さな恋人を抱き締めていた。
「絶対俺が守ってやるからな」
小さな手を背中にまわし、ぎゅうっと抱き付いてくる。いつもの甘ったるい香水の香りはしなかった。
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