小説2

□若きボスと、暗殺者。
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「15歳、だとよ。どう思う?」
暗殺チームがアジトとして使っている一室。
短くなった煙草を灰皿に押し付けると、イルーゾォが呟いた。
「別に…良いんじゃねえか」
音楽雑誌から目を離さないまま、ギアッチョはぽつりと呟いた。その様子を見て、イルーゾォは眉間に皺を寄せる。
「前のボスを倒したのはスゲーと思うぜ。ブチャラティ達と組んでな…でもよ、ギアッチョ。俺はさすがにガキをボスと呼んで、その下で働かなきゃいけないってのがよぉ」
「俺は…そこまで気にしてない」
「マジか」
意外そうな表情のイルーゾォを見て、ギアッチョはニヤリと笑った。
「メローネもそんなこと言ってたな。アイツの考えてる事はよく分からねぇけど…」
「ん、イルーゾォ。メローネは…ジョルノの事を気にいってるんだと思うぜ」


「ありがとうございます。貴方のベイビィフェイス…本当に頼りになりますね」
任務を終えたメローネの報告を聞きながら、ボス――ジョルノは年上の部下である彼に賛辞を送った。
「組織の為…貴方の為なら、なんだってしますよ」
忠誠の言葉を延べ、笑顔を見せるメローネ。
ジョルノは照れくさい気持ちを隠しながら、熱いミルクティーを静かに口に運ぶ。
「ああ、ボス。この前仰っていた幹部の事ですが。何も心配する事はありませんよ。あいつらは…」
メローネは、こうやってよく古株の幹部連中の扱い方や、敵対する組織の情報なんかをジョルノに教えてくれた。
入団してすぐにボスの座についたジョルノには、分からない事だらけだったので非常にありがたかったのだが、さすがに最初は訝しんだ。
昨日まで味方だった者に突如裏切られるような世界の中、何故こうも優しくしてくれるのか、裏があるのではないかと。賢明な少年、ジョルノがそう思うのは無理もない事だったが、すぐにその考えは覆された。
「ボス。最近疲れてるんじゃないですか?無理はしないで」
この男は、本当に自分を慕ってくれている。それは疑いのないものだと、メローネの様子を見るとありありと分かったのだ。
「大丈夫ですよ。あの、メローネさん」
「何です?」
「…敬語じゃなくていいです。その、ずっと年上の貴方に敬語を使われると、変な感じだ」
それを聞いてメローネはクスッと笑った。
「ボス相手にタメ口なんて聞けませんよ。そんなこと他の連中に言うもんじゃないですよ?舐められてしまいますから」
「いいんですよ。…気にしないでください」
「そんなに言うなら…でも癖で敬語になっちまいそうだな」
組織内でも忌み嫌われていた暗殺チームの男と、新たなボスの間には、不思議な信頼関係が築かれていた。


一人になってから、ジョルノはパソコンを立ち上げると、メローネのデータに目を通した。
ジョルノはボスになってすぐ、一通りの部下達のデータは調べたが、メローネのものは何度見ても不可解だった。女性を殺す残酷なスタンド。チーム内でも変わり者と呼ばれているらしいが、ジョルノといる時の彼は、ただただ優しい。
彼の経歴。見るたびに気になる項目。
売春婦の母に虐待されて育つ。母が薬物中毒で死んだのちに組織入り――。
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