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□Slime bucket
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今私が君に本当の気持ちを打ち明けたら、きっと今以上に辛い思いをするんだね。
だから、私はこのままでいい。
君と一緒にいられるなら、どんな辛い事でも我慢できるから。

だから、お願い。

傍に居させて。





「あれ、どうしたの?」


「え、なにが?」


朝のHR中、暇だった私は窓の外を見ながら考え事をしていた。
そしたら、いつの間にかHRは終わっていたようで、栄口の声が聞こえたから振り返る。
栄口は空いている私の前の席に座って私の顔を見た。

どうしたの?なんて言われるような事をした覚えはないから、私は普通になにが?と返した。


「なんだか元気がないように見えたから」


「そうかな?でもなんでもないよ」


「そっか。なんかあったらすぐ言ってね。いっつも俺ばっか助けてもらってるからさ」


「うん、ありがとう」


本当は、なんでもないなんて嘘。

私は栄口が好きで、でも栄口は私には振り向いてくれない。

栄口の顔を見るだけで、辛い。
それでも、栄口の傍にいたい。
矛盾してるってことは、自分でもわかってる。





――俺、好きな子いるんだ。


頬を赤く染めて嬉しそうに笑う栄口の顔を初めて見たときは、胸に鋭い刃物で抉られたような痛みが走った。
一気に瞼の裏に込み上げてきた物を、必死に抑えたけど堪えきれなくなって、応援するね、と一言だけ言ってその場から逃げ出した。
その後すぐに学校を早退した私は、次の日からはどんなに絶対に泣かないと自分で決意してその日だけ思いっきり泣いた。


そして、次の日からは決意したとおりに、栄口の前ではどんな事があっても泣かないで、できるだけ笑っているようにした。


たまに栄口から好きな子の事を相談されるようになって、そのたびに私は胸が潰されるような気持ちになった。


それでも今まで耐えてきたのは、栄口と少しでも一緒にいたいから、なんていう不純な動機からだった。
絶対に自分は振り向いてもらえないとわかっていても一緒にいたいから、応援する気なんてないくせに頑張って、なんて言うんだ。


そんな私に栄口は毎回ありがとう、と優しく笑って言う。
その言葉を聞くたびに、栄口の嬉しそうな顔を見るたびに胸が苦しくなる。
お礼なんて言わないで。
私はそんな良い人なんかじゃない。
心の中ではうまくいかないで欲しいって思ってるのに、栄口に嫌われたくないから良い人ぶってるだけなの。
だから、私なんかに優しくしないで。



なんて思ってても、やっぱり私は栄口の前では必死に笑い続けるんだ。



あぁ、私はなんでこんなに嫌なやつなんだろう。

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