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□告白は彼女から
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今は昼休み後半。
どの生徒達も昼食を食べ終わってそれぞれの時間を過ごしている中、俺、水谷文貴は、1人屋上である人を待つ。

風が痛いほど冷たく、肌に突き刺さるように吹く。
そのたびに、冬だという事を実感させられる。
でも、そんな寒さなど俺には関係なくて。
そろそろやって来るであろう1人の女の子の事を考えながら、高鳴る鼓動をひたすらに抑える事に必死だった。

それでも、時間が経つにつれ鼓動は早くなるばかりだ。
この鼓動を抑えるのは無理だ、という事に気づいた時、屋上のドアがキイッと重たげな音を立てて開いた。


「ゴメン水谷、遅れちゃった。待った?」


「ん、全然。」


上下に揺れる肩と荒い息遣いで、彼女が走って来てくれたという事はすぐにわかる。

彼女こそが、俺の想い人。

純粋な黒色でサラサラなショートカットの髪に、整った顔と白くて細い体。
笑った顔が誰よりも可愛い彼女は、当たり前のように男子から人気があった。
そして優しくて頑張り屋という性格から、女子にも人気があった。

俺も、彼女のことが好きなたくさんの男子の中の一人だ。

今日は、しっかりと自分の思いを伝える。
もう覚悟は決めたんだ。


「それで、話しって何?」


そう彼女に聞かれて、心臓がドキリと鳴った。
告白する準備だって、振られる覚悟だって、もう既にできているつもりだったのに、ここまで来て急に言葉が出なくなった。
ここで俺のヘタレスキルが発動するなんて…。


「水谷?」


心配したような顔で俺の顔を覗き込んできた彼女。
その仕草にドキッとして目を逸らす。
多分、今の俺の顔は茹蛸状態。


しかし、この後彼女が発した言葉によって、俺は更に硬直した。



「…私ね、水谷のこと大好き。」


「…え!?」


自分の耳を疑った。

ギギギッと効果音のつきそうなくらいにぎこちなく顔を動かして彼女を見る。
頬は少し桃色に染まっていて、瞳は少し潤んでいた。
そんな彼女の瞳は、どんな宝石よりも綺麗だと思った。
キザなセリフかもしれないけど、本当にそう思ったんだから仕方がない。

俺が彼女を見つめて固まっていると、彼女は俺の目をしっかりと見て、さっきの言葉をもう一度繰り返した。


「水谷、大好きだよ。」


今度は、ハッキリとわかった。
聞き間違えじゃない。

理解した瞬間、俺の固まっていた体が動き出した。
彼女の細い腕を引き寄せて、俺の腕の中におさめる。
彼女も、俺の腰にゆっくりと手を回した。


「俺も好きだよ。ずっと前から。」


そう言って強く抱きしめると、それに答えるように彼女の腕の力も強くなる。
あぁ、俺は今すごく幸せだ。


告白は彼女から


(結局あっちから告白されちゃった…。俺ってどんだけヘタレ!?)
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