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□愛しいアイツに会える
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俺の世界に、色はない。


アイツがいなくなってからどれくらい経っただろう。
1ヶ月?1週間?3日?いや、そんなことはどうだっていいんだ。

俺の世界には色はないんだ、日付や曜日や時間なんて存在しないんだ。



明日なんて、ないんだ……




あの日は久しぶりに部活がなくて、俺はアイツと一緒に出かける約束をしていた。

デートなんて久しぶりだったから、アイツはすごく嬉しそうだった。

勿論俺だって楽しみだった。

どこ連れてけば喜んでくれるかな、とか、どんな服着て来んのかな、とか考えながら約束の場所でアイツがやってくるのを待ち続ける。

約束の時間の3分前。
アイツがやってくるであろう横断歩道を見る。
すると、淡い水色のワンピースを着たアイツが笑顔で俺に手を振っている。

少しして、信号が青になると同時に走ってこっちに向かって来るアイツ。



その時だった……



キキーッと自棄に耳につくブレーキ音。
それとほぼ同時に俺の頭にズキンと響くようなたくさんの人の叫び声。

頭の中が真っ白になった。

何が起こっている?

俺の目の前には真っ赤な海が広がる。

その真ん中に倒れている俺の愛しい人。

周りの人がなにやら騒いでいるが、俺は何が起こったか理解できず、ただ目の前に倒れるアイツの頬に震える手で軽く触れる。

アイツは痛みに顔を歪ませながら、最後の力を振り搾った様な微かな声で「隆也」と一言俺の名前を呼んで、息をしなくなった。

その直後、誰かが呼んでくれたらしい救急車が、赤いランプをつけて大きいサイレンを鳴らしてやって来た。
俺はパニック状態のまま一緒に救急車に乗り病院へ向かう。

病院に着き、アイツは治療室へ運ばれ、俺は待合室でアイツの回復をただただ祈る。

しばらくすると、アイツの両親がやって来た。

俺はどうすればいいかわからず、ひたすら謝り続けた。

そんな俺に、アイツの両親は「隆也君の所為じゃないから、あの子は大丈夫だから」と優しく言ってくれた。

その優しさが、俺には逆に辛かった。



それから間もなくしてからアイツの心臓は止まり、もう2度と戻ってこない存在となった。



治療室に入り、ベッドの上で眠っている愛しい人を見つめる。

今俺の前で眠っているのは、本当にアイツなのか…?

いつも頬をピンク色に染めて笑うアイツが、真っ白な顔で目を閉じたまま。

いつも柔らかくて、温かくて、触れると安心するアイツの小さな手は、硬く冷たく、いつも以上に小さく感じた。

その一つ一つが、俺に確かな現実と絶望感を与える。



俺は、あれからひたすら泣き続けた。

もう何日も立て続けに泣いているはずなのに、涙は枯れることを知らない。

アイツのいない世界で俺が生きている意味はあるのだろうか。
この抜け殻のような状態を生きていると言うのだろうか。

この世界にもうアイツがいないなら、もう2度と戻ってこないなら……そうだ、俺がアイツの生きる世界に逝けばいいんだ。

もうこの世に未練なんてない。
いつ死んだって構わない。
だったら、今すぐにでもアイツに会いに逝こう。

俺は近くにあったカッターの刃を出し、グッと力をこめて、自分のノドに突き刺した。

あぁ、これでやっと……


愛しいアイツに会える
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