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□ドキドキがとまらない
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今の時間は昼休み。

殆どが弁当を食べ終わって自由に話してたり、本読んでたり、眠ってたり。

だが、どのクラスにも一人くらいは昼休みにはしゃぎすぎて、何かやらかして先生に怒られるやつがいるもんだ。


「田島バカヤロッ、危ねっつの!」


「ダーイジョーブ!!オレ落ちたりしねーもん。」


教室に響く泉の怒鳴り声と田島の呑気な声。

さあ、今の状況を説明しよう。

窓側の席でいつも通りに、9組野球部+俺の4人で話をしてた時。
なんでこうなったかは覚えてないが(記憶に残らないほどくだらない理由だったって事)、田島が突然教室のカーテンをよじ登り始めた。
ホント、訳わかんねー事するやつだよな。

それを慌てて止める泉と、危なっかしい田島と、心配そうに見てる三橋と、軽く呆れ気味の俺、ってな状況。


「オイ田島ー、そろそろ降りないと危ねぇぞ。」


一向に降りて来そうにない田島に、俺が呆れて声をかける。


「おー、浜田。今降りる。」


俺に言われてようやく田島が降りてくる。

その時……


ビリィッ!!

ドサッ


大きな2つの音が教室に響く。

今まで賑やかだった教室が一気に静まり返り、皆の視線がその音の原因である田島の方に向く。


「いって〜」


「バッカお前、何カーテン破ってんだよ!!」


「わざとじゃねーもんっ」


静まり返った教室で田島と泉の大きな声が響く。
うわっ、皆の視線が痛いんですが…


「たじ、まくん…そろそろ、せんせ…来ちゃう、よっ」


三橋が慌てた口調で田島に話しかけたとき、教室の扉がガラッと開く音がする。
田島を見ていた皆の視線が、次はその教室の扉のほうに向く。
教室が一瞬にして緊迫した空気に包まれた。

田島が小さく、ヤバッと呟いたのが聞こえた。

あーあ、コイツ終わったな。

皆がまた、ゆっくりと視線を田島に戻す。哀れむような目だ。
泉は、呆れたようにハァっと一つため息をついた。
そして、その扉を開けた人物、つまりは先生が、ゆっくりと田島に近づき、無言でげんこつを一発。
ゴンッといい音がした。


「いてぇ!」


田島は涙目で叫ぶ。


「誰か裁縫得意なやつ、カーテン縫い直しといてくれるか。」


先生が皆のほうに向き直って喋る。

すると、俺のすぐ後ろから声がした。


「あ、私やります。」


ビックリして後ろを振り向くと、俺の大好きな女の子、苗字名前が小さく手を上げていた。

彼女はチラッと俺の顔を見て、またすぐに視線を戻す。
思わずドキッとしてしまった。

そりゃあ、好きな子とイキナリ目があったりしたら誰だってそうなるでしょ。
別に、俺がヘタレだからとか、そんなことでは絶対にない。


「おぉ、じゃあ苗字よろしくな。…でも、流石に一人だと大変だから…浜田!お前も裁縫得意だろ。2人で協力してやって。」


…え?ちょ、待って、コレって強制?拒否権はナシ?


「じゃあ浜田君、早速放課後残ってやろっか。」


「っお、おう。」


混乱してるところに、イキナリ苗字が話しかけてきて、思わず俺はビクッとする。
うわー、変に思われたかも…

そんなことを考えている俺に、彼女は整った眉を少し下げて、申し訳なさそうに言った。


「浜田君て優しいよね。普通ならこんな面倒なこと嫌がるのに。」


「いや、俺は別に…そんな面倒だって思ってないし…」


そう答えた俺に、少しだけ驚いたような表情をして、ふんわりと優しく笑いかける彼女。

だって、放課後に君と2人きりなんて、嫌がる理由の方がわからない。

俺は体が熱くなるのを感じた。
きっと今、俺の顔は真っ赤だ。

そんな俺に、彼女が止めを刺すように発した一言……



「浜田君のそういうとこ、大好きだよ。」



彼女の優しくて甘い声が、耳から離れない。

耳から入って頭に回り、何度も何度も木霊するその声に、俺は顔を真っ赤にしたまま思考停止状態。


赤くなったまま黙っていた俺を見て、泉がニヤッと不敵な笑みを浮かべる。
そして、肩をポンと叩き俺の耳元で、


「大好き、だってよ。よかったじゃん。」


一言呟いて去っていった。


ドキドキがとまらない


(〜〜〜泉、お前っ……!!!)

(浜田は分かりやすいんだよ)
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