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□たった一つの笑顔で
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「残り5分で回収するぞー」


先生はチラッと時計を見てから、俺を急かす様にそう告げる。


今は5時間目、英語の時間。昼休みも終わり、誰だって眠くなる時間帯だ。

モチロン、今必死に英語の小テストの問題を解こうと頑張ってるオレだって、眠い。
っつーか本当は寝る予定だったんだ。

なのに、運悪く小テストなんて物があったわけで、寝たくても寝られない状況。

元々勉強なんてしてない上に、頭は既にお昼寝モードに入っていて全くと言っていいほど問題が解けない。

それどころか眠くて意識が朦朧とする。

更に運の悪いことに、オレの席はいい具合に日差しが差し込んでくる窓側で、少しでも気を抜くと今にも眠ってしまいそうだ。


…しかし、後5分でテストは終わる。
問題が解けないのは仕方がない、もう諦めた。後5分でやっとオレは寝られる。

もう少しの辛抱だ、頑張れオレ…!



「よし、時間だ。回収しろー」


やっと終わった。

既に眠気が限界を超えていたオレはため息を一つついて、先生のテスト終了の合図と共に勢いよく机に伏せる。

そのままオレが気持よく眠りにつこうとした瞬間……


「いーずみー!起きろー!!」


耳元で叫ばれたと同時に、頭をバシンと教科書で叩かれる。


オレの眠りを邪魔したやつ…そいつは隣の席の苗字名前。
オレよりチビの癖にオレのことをチビチビ言って馬鹿にしてくるムカつくやつ。
でも、オレはそんなムカつくやつのことが好き…だと思う。

こいつの笑顔見ると可愛いって思うし、ちょっとした仕草にドキッとしたりする。認めたくはねぇけど、きっとオレはこいつが好きなんだ。


でも、それとこれとは話しが別で。

オレの眠りを邪魔したやつは誰だろうと許さねぇ!


「ってぇな!!っつーか耳元で叫ぶんじゃねぇよバカヤロー!!」


オレはこの時結構本気でキレてて、普段よりも強めに怒鳴った…はずなのに。


「授業中に寝るな、泉のバーカ。」


こいつは全く反省の色は見せずにとびきりの笑顔で言い放った。




オレは、相当こいつの事が好きなんだろう。

人が気持ちよく寝ようとしてたところを耳元で叫ばれて、その上教科書で思いっきり叩かれたんだ。

いくら好きなやつにとは言え、誰だって怒って当たり前。絶対許さねぇって思ってたはずなのに。


たった一つの笑顔で


怒りなんて一瞬で消えた。

(ねぇ、泉ってさ、私のこと好きでしょ!)

(っ!ンなわけねーだろ、お前みたいなガキ!!)

(いった!!叩かないでよ泉のバカバカバーカ!)
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