長編番外

□5年くらい前の話1
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困った事になったと、俺は内心焦りながら目的地へと向かう。

先日突然支部長に呼ばれたと思ったら第一部隊、つまり強襲部隊の隊長に任命されてしまい、色々と衝撃的な事実を知らされ、おかしな任務に向かわされ、ただでさえ余裕がないと言うのに、間をおかずに榊博士からの呼び出しと来た。

もう勘弁してくれとでも叫ばせてほしいところだ。しかしそういうわけにもいかず、俺は黙って扉をくぐる。

出迎えてくれた博士からは相変わらず感情が読み取れず、悪い人間ではないとはわかってはいるのだが、
その得体のしれない脳内に不気味さと不信感を感じずにはいられない。

「やぁよく来たね
適当にくつろいで待っていてくれ」

待つといってもそう大した時間ではなく博士は手早くコンピューターを終了させ、俺に近付いてきた。

「まずは、リーダー就任おめでとう
任務は順調にこなせているかい?」

「まぁ、なんとか…」

「そうかい、それは良かった
それなら私からの特務が増えたところで
何も支障はないね」

このおっさんは俺の台詞を聞いていなかったのか、あるいは聞く気がないのかのどっちかだ。おそらく後者だろうが。

相手がこの人では俺に選択権がないことなど最初からわかりきってはいるが、出来ればごめんこうむりたい。生きるため、守るため、この仕事をする理由はたくさんあるが、ただでさえ厳しい仕事をこなしているのだから任務の数なんて少ない方が良いに決まってる。

「まぁそんな怖い顔をしなくても
私だって鬼じゃない、君1人だけを戦場に送り出したりはしないさ
強力な助っ人がいるからね
何も心配は要らないよ」

「…それがソーマなら
俺1人で行きますわ」

助っ人と聞いて思い付くのは他部隊の隊長だがそんな噂は聞いたこともないし、おそらくソーマだろうという結論に至る。確かにアイツがいれば心強いが、ただでさえ支部長に酷使されているソーマを巻き込みたくはない。

博士は少し目を見開いた後、喉を鳴らして笑う。

「ソーマではないよ
僕しか知らないゴットイーターさ」

どこか腑に落ちない思いを抱えながら俺は部屋を出る。扉が閉まる直前、博士と少女の声がした。

「君の見立てではどうだい?」

「仲良く出来そうで楽しみだよ」
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