「おお振り」×「ダイヤのA」

□2日目、夜、捕手×捕手!
1ページ/2ページ

「ちょっと話をしないか?」
御幸は西浦の捕手、阿部に声をかけた。

西浦高校が青道の寮に滞在する最初の夜。
1年のレギュラー3人は、西浦のメンバー3人と楽しそうに話し込んでいる。
沢村はともかく、小湊と降谷も笑顔であることに御幸は驚いていた。
とにかく感情を表に出すことが得意でない2人なのだ。
西浦は1年生ばかりだし、人数も少ないからレギュラー争いもギスギスはしていないだろう。
そんな彼らの雰囲気が、彼らを和ませているのだろうか。

夕食後、話し込んでいた連中も、徐々に部屋に引き上げ、食堂に残る人間も減ってきた。
御幸はそっと立ち上がると、目指す人物の隣に立った。
明日の試合前にデータ収集は禁止されているが、ちょっとカマをかけるくらいいいだろう。
阿部は御幸の気配を察知すると、不機嫌そうに「なんすか?」と尖った声を上げた。

「ちょっと話をしないか?」
御幸は西浦の捕手、阿部に声をかけた。
阿部は少し考えた後「別にいいっすけど」と答えた。
そして2人で食堂の隅に移動する。

「今日の試合、どうだった?」
「負けた相手に聞くことじゃないですね。ちなみに明日の先発って降谷ですよね?」
阿部は御幸の質問には答えずに、別の質問を投げてきた。
御幸は思わずニンマリと笑ってしまう。
こちらの手の内を見せずに、相手の情報だけ得ようとする。
この男は捕手向きの男、つまり御幸と同類だ。
実はこれこそが御幸が得たかった情報だったりする。

「ああ。明日は降谷先発だけど。そっちは三橋だよな?」
「うちは他に青道と戦える投手がいないんで。」
阿部は特に卑下するわけでもなく、淡々とそう言った。
1年だけ10名のチームだというのに、青道の主将相手に引く気配もない。
そんな強気も、御幸は嫌いじゃない。むしろ大好物だ。

そのとき、食堂に歓声が上がった。
3対3で盛り上がっている食堂の中央。
田島が何か冗談を言い、それに沢村が応じて、大爆笑になったのだ。
阿部が苦笑しながら、その輪の中にいる三橋を見た。
その視線に御幸は「あれ?」と思う。
何だか好きな女の子を見るような目のように見えるのは、気のせいだろうか。

「そういや、沢村って打撃全然ダメなのに、バントだけ妙に上手いっすね。」
視線をこちらに戻した阿部が不意にそんなことを言ったので、御幸は苦笑した。
それは青道の七不思議の1つだ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ