「おお振り」×「ダイヤのA」

□初日、練習後の夜!
1ページ/3ページ

「「「うまそぉ!」」」
見事に揃った、大きな声が食堂に響き渡る。
青道の部員たちは思わず動きを止めて、西浦の部員たちを凝視した。

練習が終わった後、両校の部員たちは寮に移動した。
西浦の部員たちは「すごい」とか「デカい」なんて言葉を連発しながら、感心している。
それを見る青道の部員たちは、何だか懐かしい気分になった。
青道の面々だって、初めてこの施設を見た時には、大きさと立派さに驚いたのだ。
そのときの気持ちを思い出すと、西浦の部員たちのリアクションはもっともなことだ。

「中、案内してやろうか?」
三橋に声をかけてるのは、沢村だった。
練習でちょっとしたアクシデントがあったせいで、この2人はすっかり仲良くなった。
すると田島が「オレも!一緒に案内してくれ!」と手を上げる。
結局泉も加わり、夕食までの間、4人が寮の中を賑やかに歩き回っていた。

そして夕食の時間。
両校の野球部員は、食堂に集まった。
青道の部員たちにとっては、10名増えたところであまり変わったという感覚はない。
だけど西浦の部員たちは、この人数に圧倒されているようだ。
そして青道の部員たちが食べ始めようとした瞬間に、それは起きた。

「「「うまそぉ!」」」
見事に揃った、大きな声が食堂に響き渡る。
青道の部員たちは思わず動きを止めて、西浦の部員たちを凝視した。
だが西浦の部員たちは、そんな視線など物ともしない。
次の瞬間には「いただきます!」とさらに元気な掛け声が響く。
そして彼らは一斉に箸を伸ばすと、ものすごい勢いで食べ始めた。

「まるで欠食児童だな。もしかして昼メシ食ってねーんじゃねぇ?」
呆れた様子で苦笑するのは、副主将の1人、倉持だ。
食欲旺盛な様子なら、少し前まで同室だった先輩で見慣れている。
そんな倉持でさえ、驚くほどの食べっぷりだ。
「1年だけ10人だと、やっぱり仲良くなるんだなぁ」
しみじみとした様子でそう呟いたのは、もう1人の副主将、前園。
青道の部員たちは同じチームの仲間ではあるが、過酷なレギュラー争いや妬みなどもある。
だから西浦のような、同学年10名だけのほのぼのした感じには絶対にならない。

「いや、多分そんな単純なもんじゃねーよ。」
2人の副主将の意見を、主将の御幸はやんわりと否定した。
見かけほど彼らはヤワではないと思う。
だが倉持と前園は顔を見合わせると、何となく納得いかないような顔で御幸を見ている。

とにかく明日はBチームの試合、それで彼らの実力はある程度見えるだろう。
今くどくど何か言うより、その方がわかりやすい。
御幸は2人の副主将の視線を無視しながら、黙々と食事に没頭した。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ