arcanum

□The High Priestess
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「彼に決意させて欲しいの!」
私は豪華な椅子に腰掛ける美少年に、思いの丈をぶつけていた。

私はある洋館にいた。
今にも朽ち果てそうなこの洋館には、変な噂がある。
誰も人が住んでいないはずのこの家には、悪魔が棲んでいる。
いつも暗く閉ざされた洋館に明かりが灯ったとき。
洋館に入って、悪魔に願い事をすれば、それは聞き届けられる。

悪魔の噂を聞いてから、いつも明かりを気にしていた。
もしも本当に悪魔がいるなら、叶えてくれるなら。
どうしても欲しい。
トモヤの心を私だけのものにしたい。

でもレイナを見舞った帰り道、その洋館の前を通った私は驚いた。
いつ見ても真っ暗だった窓に、明かりが見える。
それに門扉に幾重にも巻かれた頑丈な鎖もない。
そして少し力を入れると、門扉はすんなりと開いた。
私は門扉を抜けて、洋館の玄関に駆け込んだ。

「いらっしゃいませ。坊ちゃんがお待ちです。」
玄関ホールで待ち受けていた長身の黒服男は、驚く様子もなくそう言った。
うわ、トモヤよりも確実にカッコいい。
白い肌と整った顔は、多分欧米人だ。
だけど日本語の発音はも綺麗。
イメージはモロに執事だな。

「願いをどうしても叶えたいなら、どうぞこちらへ」
黒服の執事はそう言うと、先に立って歩き出す。
私はその後について、長い廊下を進んだ。
そして奥の部屋で、豪華な椅子に腰掛けた美少年と対面した。
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