「おお振り」×「ダイヤのA」

□再び合同練習、その8!
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「勝った〜!」
練習試合とは思えないほどの熱気の中、歓声が沸く。
沢村はゆっくりとマウンドを降りる三橋を見ていた。

「全然喜べる内容じゃねーよな。」
それが試合が終わった直後の御幸の感想だった。
そう、試合こそ勝ったが、全然喜べる内容じゃない。
安打数は西浦の方が上だし、両チームの投手を見渡しても、一番好投したのは三橋だ。
もしも判定なんて制度が野球にあったら、今日の勝者は西浦だろう。

悔しくて、たまらない。
予定より早くマウンドを降りた沢村は、全然勝った気がしなかったからだ。
しかも阿部と2人で「公式戦で当たったら、絶対勝とう」なんて言っている。
今日の試合の後では、洒落にならない。
前の合同合宿よりも、着実に差を詰められているのは、間違いないからだ。

「ったく、すげぇ絆だよな。」
不意に背後から声をかけられ、沢村は振り返る。
立っていたのは、決勝のスクイズを決めた御幸だった。
その視線の先には、もはや恒例行事のように、手の平を合わせている阿部と三橋がいた。

「オレだって、次こそ完封してやる!」
次は勝つと息まく西浦ナインを見ながら、沢村は力強く宣言した。
だが御幸はこれ見よがしにため息をつく。
そして「打撃も練習しろ。今日もノーヒットだろ」と言った。
その通り、沢村は今日2打席だったが、どちらも三振だった。
凡退どころか、バットに当てることさえできていない。

「先輩こそ、スクイズしかしてないっすよね!」
沢村が言い返すと、御幸が「うるせーよ!」と叫ぶ。
三橋が対御幸にだけ投げたナックルカーブに、御幸は完全に打ち取られてしまったのだ。
結局最後のスクイズ以外は、全打席凡退。
これは4番として、かなりまずい展開だ。

「オレはまだ発展途上なんだよ」
「オレだって、そうっすよ!」
御幸の言葉に、沢村は予想通りの反応を返した。
沢村は悔しさを感じているけど、ちゃんと上を向いている。
そのことに御幸は安堵していた。

これがオレのやり方だ。
御幸は心の中でそう思う。
チームの特性上、また御幸の性格上、阿部みたいに1人だけを心の中心に置くことはできない。
だけどこうしてからかいながら、やる気を引き出してやることはできるのだ。

「整列だぞ」
御幸は沢村に声をかけると、ゆっくりと足を踏み出した。
次こそ、もっと圧倒的に勝つ。そのための第一歩だ。

【続く】
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