「おお振り」×「ダイヤのA」

□再び合同練習、その7!
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「にしても、ホントに嫌なチームだよな」
倉持の言葉に、御幸が頷く。
沢村はぼんやりと、そんな2人のやり取りを聞いていた。

前園のホームランでようやく1点を追加。
これで2対1、西浦がまだ1点リードしている。
この程度の点差では、まだまだ試合はわからない。
だが青道にとって、ここまでの展開は、予想外だった。

相変わらず、西浦は徹底的にこちらを研究していた。
しかも沢村対策も万全だった。
本当は5回まで投げる予定だった沢村は、4回の途中であえなく降板。
リリーフは降谷だ。
一応予定では8回あたりから、川上が投げることになっている。

嫌なチーム。本当にその通りだ。
新設2年目の県立高校だからと侮るつもりはない。
だが有力選手を集めて、環境も整った強豪校とは、スタートから違うはずなのだ。
それなのに、いい勝負を仕掛けてくる。
しかも勝つ気でいるのだ。

「相変わらず、阿部は過保護だねぇ」
倉持が冷やかすように、そう言った。
御幸は「そうだな」と答える。
だがそうしたくなる気持ちはよくわかった。

前園のホームランは、完全に出会い頭だ。
あれで投手に自責点がつくのは、かわいそうだと思う。
だからせめて、気持ちを上向けてやるために、できることをしたくなるのだ。

御幸はチラリと沢村を見た。
まったく阿部に騙されたと思う。
阿部は試合前に「先発は降谷がいい」と暗示めいたことを言った。
それを御幸は「降谷に先発されたくないと思わせようとしている」と思った
つまり実は降谷に照準を合わせていて、裏の裏をかいたと。
だからわざわざ監督に、先発は沢村を推した。

だが阿部はさらにその裏をかいた。
沢村対策を万全にしたから、沢村を先発させたかったのだ。
確かに冷静に考えれば、わかったはずだ。
西浦の女性監督がサウスポーでそこそこ投げられる人だとは知っていたのだから。

打たれて、予定回数を投げられなかった沢村は肩を落としている。
阿部のように、声をかけて、世話を焼いてやりたいが、御幸にはできない。
他にも投手がいるし、何より御幸は主将なのだ。
沢村1人ばかりに気を配るわけにはいかない。
もっとも御幸のキャラでは、やったところで気持ち悪いだろうが。

何となく羨ましい気持ちで西浦のベンチを見ていたら、阿部と目があった。
挑むような視線から、絶対に勝つ気なのだとわかる。
御幸は視線を外さず、強気な視線を返した。
こっちだって、負けるつもりはないのだ。

このまま沢村を負け投手にはしない。
御幸は強くそう思った。

【続く】
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