「おお振り」×「ダイヤのA」

□さらに後日談、その4!
2ページ/2ページ

「そうか、わかった。ありがとな。」
御幸は礼を言うと、通話を終えた。
すると周りを囲んでいた部員たちが、一気に身を乗り出して来た。

御幸は寮の食堂で、連絡を待っていた。
警察、もしくは西浦高校からの連絡は、監督の片岡宛てに入ることになっている。
だから部屋に戻るようにと、高島に言われた。
でも部屋にいても、落ち着かない。
だからこうして食堂で、携帯電話を睨みながら、待っていたのだ。

他の部員たちの何名かも、食堂に詰めていた。
やはり沢村のことが心配なのだろう。
まして相手は沢村を青道の野球部員と知って、からんだらしい。
卑劣な策略に嵌められそうになったことに、全員が怒っている。

同室で何かと沢村をかまっている倉持や、仲のいい金丸や春市などはわかる。
だがどんなときでも練習を欠かせない前園も、今日はここにいる。
こうして見ると、やはり沢村はみんなに好かれていたのだと思う。

「阿部からだ。沢村たちにからんだ連中は警察に捕まったらしい。」
「じゃあ、沢村は?」
勢い込んで聞いてきたのは、倉持だ。
だが御幸は「沢村も三橋もまだ見つかってない」と首を振る。
途端に集まっている一同が、失望のため息をついた。

「あいつ、何で連絡してこないんだ?」
「連絡できねー状態ってことじゃねーの?」
「そういや、携帯は西浦の連中に預けたままなんだっけ」
「もしかして電車で帰ってくる途中?」
「だったらとっくに戻って来てるだろ」
1年生たちが、不安げにそんな話をしている。
そう、こんな時間にまだ戻っていないことが問題なのだ。

「なぁ、まさか歩いてるってオチ、ないか?」
ふとそんなことを言い出したのは、川上だ。
御幸は「は?」と間の抜けた声を上げてしまう。
まさか、そんなことが。ありえるのだろうか?

「あいつのことだから、金が足りなくなって歩いてるとか」
川上が重ねて、そう言った。
前園が「そりゃねーだろ」と答えて、御幸も「だよなぁ」と答える。
誰からともなく笑いが起きようとした瞬間、倉持が「そうかな」と首を傾げた。

「ありうるぞ。あいつバカだし」
倉持が真面目な顔でそう告げて、全員の笑いが凍った。
確かに。バカで何をしでかすかわからないのが沢村だ。

実は倉持の予想は大当たりで、三橋と沢村は徒歩で帰ろうとしている真っ最中だった。
そのことを後で知った青道高校の面々は、呆れてため息をつくことになる。
だが今は、ただただ心配だ。
御幸は祈るような気持ちで、鳴らない携帯電話を睨んでいた。

【続く】
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ