「おお振り」×「ダイヤのA」

□さらに後日談、その2!
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「警察に届けた方がいいのかもしれねーな」
阿部から事情を聞かされた御幸はそう言った。
電話の前に集まっていた部員たちは「警察」という単語に、目を剥いた。

ったく、あのバカ。
御幸は舌打ちしそうになるのを、慌てて堪えた。
知らせてくれた阿部に聞かせるものではない。
それにとにかく、冷静にならなければ。

『警察、届けちゃっていいんスか?』
電話の向こうの阿部は、心配そうに聞いてきた。
何のことかわからない御幸は「何で?」と聞き返す。
すると阿部は「そっちは今、大事な時期でしょう」と答えた。

大事な時期。確かにそうだ。
青道高校は、もうすぐ甲子園に行く。
問題を起こすことなど、絶対にあってはならないのだ。
だからこその阿部の問いだった。
もしかして沢村たちが消えた経緯によっては、不祥事になるかもしれない。
事情がわからないうちに、警察に届けていいのかと。

「別にかまわない。甲子園よりやつらの無事の方が大事だろ。」
御幸は即答した。
阿部の言いたいことはわかったし、心遣いには感謝する。
だけどそのために沢村たちになにかあっては、取り返しがつかない。

『わかりました。とりあえずうちの責任教師と三橋の親に話します。』
「わかった。その後、こっちにも連絡くれ。」
『了解です。いったん失礼します。』
「ああ、よろしく頼む。」

電話が切れたのを確認して、御幸は受話器を置いた。
部員たちが不安そうに「どうした?」と聞いてきた。
会話の様子から、かなりヤバい感じが伝わったのだろう。
だが御幸はそれらの声を無視して、走り出した。
取りあえず今は、片岡や太田、高島たちにわかっていることを伝えるべきだろう。

ったく、どうしてこんなに危なっかしいんだ。
御幸は走りながら、叫び出したいような気分になる。
だが同時に「手がかかる子ほどかわいい」という格言は本当なのだと思った。

【続く】
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