「おお振り」×「ダイヤのA」

□さらに後日談、その2!
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「あの、沢村、帰ってますか?」
阿部は焦る気持ちを押さえながら、そう聞いた。
もしかしたら三橋と沢村が意気投合して、青道の寮にいてくれればと思ったのだ。
だけど御幸の答えはやはり「まだ帰っていない」だった。

実は阿部は、盛大に拗ねていた。
三橋たちがプロ野球のオープン戦を見に行くという話。
最初は9組の4人で行く予定だったそうだ。
だが浜田が行けなくなったのだと聞いた。
それならばその1枚、自分に回してくれればいいのにと思ったのだ。
何しろ三橋とはバッテリーを組んでいるのだから。
他の部員に比べたら、優先順位は高いと思う。
だがその余ったチケットは、なぜか青道高校の沢村に渡ってしまったのだ。

そして観戦の日、阿部は三橋に電話をかけた。
明日の練習の内容を確認しようと思ったのだ。
見に行った試合はとっくに終わったことを、ネットで確認している。
試合後に食事をしたとしても、もう帰っているだろう。

別に今、焦って確認するようなことでもない。
だけど何となく、三橋の声が聴きたくなったのだ。
それを素直に言えないから、明日の練習を口実にした。
ほんの2、3言、話をすれば、それでよかった。
阿部自身、この気持ちの正体に何となく気付いている。
だけどそれを具体的な言葉にする勇気は、今のところまだない。

阿部は携帯電話を操作して、三橋の番号をコールする。
だが帰ってきたのは、意外な声。
不機嫌そうな声で「阿部?」と応じたのは、泉だった。

『三橋と沢村、いなくなっちゃったんだ。』
泉はそう言った。
阿部は思わず「何だ、それ!?」と叫んでしまう。
すると電話の向こうから「声、デケー」とうんざりした声が返ってきた。

試合が終わった後、三橋と沢村は土産を買うと言って、グッズショップに行ったそうだ。
田島と泉はゲームをしようということになり、ここで一度別れた。
だが待ち合わせたゲームセンターの前に、2人はいつまでたっても現れないというのだ。
しかも連絡も取れない。
グッズショップが混んでいたので、三橋も沢村もカバンを泉たちに預けていた。
その中に携帯電話も入れていたというのだ。

取りあえず電話を切った阿部は、三橋の家に電話をしてみた。
すると三橋母がおっとりと「まだ帰ってないんだけど」と言った。
そして今度は沢村の方を確認しようと、青道の寮に電話をかけた。
幸いにも出てくれたのは御幸で、長い前置きはしないですんだ。
だがやはり沢村も戻っていないという。

「何か消え方が尋常じゃないんですよ」
阿部は泉から聞いた話を、御幸に説明する。
すると電話の向こうの御幸は「警察に届けた方がいいのかも」と言った。
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