「おお振り」×「ダイヤのA」

□後日談、その5!
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「お前、正月はどこにいたの?」
その夜、部屋にやって来た御幸は、沢村にそう言った。
沢村としては、何としても言いたくないことだった。
正月休みの間、寮は練習禁止であることを聞き逃し、挙句に実家に帰るタイミングも逃した。
帰るに帰れず、1人で寮にいるのも手持ち無沙汰で、結局三橋の家で過ごしたのだ。
だがやはりカッコ悪い。
それは楽しかったし、三橋宅の手製の投球練習場で身体も動かせたけど、何だか恥ずかしかった。

「何で!?寮にいたし!」
沢村は必死に嘘をつく。
だが御幸は「嘘を言うな」とあっさりスルーだ。

「寮は練習禁止だった。だけどお前、しっかり調整できてるじゃん」
「それは、その」
「寮で勝手なことをしたんじゃねーの?だとしたら問題だし。」
御幸は咎めるように、切り込んでくる。
もちろんそれは吐かせるためのフェイクなのだが、沢村にはわからない。

「もし規則を破ったなら、しばらく練習は。。。」
「わ〜、もう!言いますよ!」
練習禁止になどされたら、たまらない。
沢村は携帯電話を取り出すと、メールを開き、さらに添付されていた画像を表示させる。
そして思いっきり御幸の顔の前に突き出した。
正月、三橋たちと初詣に出かけたときに、神社で撮った沢村と三橋のツーショットだった。

「お前、三橋の家に行ったのかよ!」
「ったく、絶対に知られたくなかったんすよ!」
沢村は思い切り文句を言う。
だが対する御幸は、霧が晴れたような爽やかな気分だった。
よくよく考えてみれば、こんなに練習漬けの日々で、恋人を作るような余裕はないのだ。

なるほど「み」は三橋の「み」か。
御幸はニヤニヤ笑いながら、携帯電話を沢村に返した。
すっかりふて腐れた沢村は、憮然とした様子でそれを受け取った。

【続く】
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