「おお振り」×「ダイヤのA」

□後日談、その5!
2ページ/3ページ

「お前、沢村と初詣に行った?」
初日の練習後、御幸に声をかけてきたのは倉持だった。
御幸は「行ってない」と首を振り「なんで?」と聞き返した。

倉持は顎をクイっとしゃくって、屋内練習場の壁に寄りかかっている沢村を示した。
携帯電話を開いて画面を見ながら、ニヤニヤと笑っている。
何ともしまりのない表情を見た御幸は、蹴飛ばしたいような衝動に駆られた。

「何か鳥居みたいなのが写ってる画像を見てるんだけど。」
「覗いたのかよ」
「偶然ちょっとだけ見えたんだよ。」
「どうせ若菜だろ」
若菜とは沢村の友人で、球場に応援に来たこともある美少女だ。
倉持は「彼女」ではないかと茶化しているが、沢村は「幼なじみだ」と否定している。

「沢村に『若菜か?』って茶化したら、違うっていうんだよ」
「だからって何でオレなんだよ。」
「沢村が『み・・・』って誰かの名前を言おうとして、慌てて止めたって感じだったからさ」
「み?」
「新しい相手かと思って。てっきりお前かと」

誰かの名前で、頭の文字は「み」。
だから倉持は、御幸ではないかと疑ったのだ。

だけど御幸には覚えのないことだ。
倉持はバツが悪そうに「何か、すまない」と言った。
そして逃げるようにして、寮へと戻っていく。
御幸はもう一度、沢村を見た。
こちらのことなど気付いていない様子で、メールを打っている。
もしかしてこの正月、好きな人でもできたのだろうか。
そんなことを思わせるほど、嬉しそうな表情だ。

何だか面白くない。
御幸は不機嫌に眉を寄せると、無駄に勢いよく沢村に背中を向けた。
その日一日、御幸は機嫌が悪く、新年早々部員たちは恐怖を感じることになった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ