「おお振り」×「ダイヤのA」
□後日談、その5!
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「お前、沢村と初詣に行った?」
初日の練習後、御幸に声をかけてきたのは倉持だった。
御幸は「行ってない」と首を振り「なんで?」と聞き返した。
倉持は顎をクイっとしゃくって、屋内練習場の壁に寄りかかっている沢村を示した。
携帯電話を開いて画面を見ながら、ニヤニヤと笑っている。
何ともしまりのない表情を見た御幸は、蹴飛ばしたいような衝動に駆られた。
「何か鳥居みたいなのが写ってる画像を見てるんだけど。」
「覗いたのかよ」
「偶然ちょっとだけ見えたんだよ。」
「どうせ若菜だろ」
若菜とは沢村の友人で、球場に応援に来たこともある美少女だ。
倉持は「彼女」ではないかと茶化しているが、沢村は「幼なじみだ」と否定している。
「沢村に『若菜か?』って茶化したら、違うっていうんだよ」
「だからって何でオレなんだよ。」
「沢村が『み・・・』って誰かの名前を言おうとして、慌てて止めたって感じだったからさ」
「み?」
「新しい相手かと思って。てっきりお前かと」
誰かの名前で、頭の文字は「み」。
だから倉持は、御幸ではないかと疑ったのだ。
だけど御幸には覚えのないことだ。
倉持はバツが悪そうに「何か、すまない」と言った。
そして逃げるようにして、寮へと戻っていく。
御幸はもう一度、沢村を見た。
こちらのことなど気付いていない様子で、メールを打っている。
もしかしてこの正月、好きな人でもできたのだろうか。
そんなことを思わせるほど、嬉しそうな表情だ。
何だか面白くない。
御幸は不機嫌に眉を寄せると、無駄に勢いよく沢村に背中を向けた。
その日一日、御幸は機嫌が悪く、新年早々部員たちは恐怖を感じることになった。