「おお振り」×「ダイヤのA」

□後日談、その2!
2ページ/2ページ

「そういやあいつら、武蔵野第一に勝ったんだよな」
「あ〜、なんかそんな名前のトコとやったってメール来てたけど」
「すげぇな。榛名に勝ったんだ。」
「誰すか、それ。」
「埼玉でプロ確実って言われてる投手だよ。速球は成宮とか降谷くらい早い。」
「・・・別に大したことないし」

沢村は口を尖らせながら、プイと横を向いた。
負けず嫌いの沢村は、他の投手が褒め称えられるのを好まない。
ましてや正捕手である御幸の口からではなおさらだ。
そんな拗ねた沢村の態度にも、御幸は「ガキか」とあっさり流してしまった。

「その他になんかねーの?西浦の話。」
「あんたも阿部とアドレス交換してたでしょ。」
「阿部のヤロー、こっちのコトを聞き出そうとするくせに、自分らの話、しねーのよ。」
「それって、嫌われてるんじゃ」
「うるせーよ」

そんな軽口を叩いている間に、沢村は以前に来たメールを順に開く。
こうしてみると、本当にここ最近の三橋からのメールは数が多い。
そろそろ三橋専用のフォルダを作った方がいいかもしれない。
1通、1通は短いけど、2、3日に1度は送って来るのだ。
まぁ沢村も同じペースで送っているが。
2人ともメル友なんて持つのは初めてのことで、楽しかったりするのだ。

「その、武蔵野?の試合で、花井がホームラン、打ったって。」
「田島じゃなくて、花井か」
「あの女の監督のお父さんって、甲子園で投げたことがある投手だって」
「へぇぇ。ノックが上手いとは思ったけど、血筋もあんのかぁ」
「練習の帰りにコンビニで、田島と肉まん、半分コしたって」
「そりゃどうでもいい」
「三橋、バックスピン?練習中だそうです。その監督のお父さんって人がコーチになって」
「はぁぁ!?それを早く言え!」

あの三橋がバックスピンを練習。
そんな重大な話が肉まんの後になるなんて、信じられない。
御幸が「バカか?バカなのか?」と沢村に詰め寄る。
今1つ話が見えていない沢村は「何なんスか!」と文句を言った。

「始まった。バッテリー漫談」
そんな2人のじゃれ合いを離れた場所から見ていた副主将の1人、倉持が苦笑した。
もう1人の副主将、前園が「見てて飽きない」と頷く。
するとちょうどその場を通りかかった川上が、ボソリと反論を唱えた。

「オレにはバカップルに見えるよ。」
その言葉に、倉持と前園は顔を見合わて、どちらともなく「確かに」と呟く。
そして何となく足音を潜めながら、黙ってその場を離れた。
なぜだか急に御幸と沢村を見続けるのが、恥ずかしくなったからだ。

【続く】
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ