「おお振り」×「ダイヤのA」

□後日談、その1!
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「阿部君と三橋君って恋人同士?」
高島のあまりにもストレート質問に、百枝は一瞬答えに詰まった。

痛いところを突くなぁ。
百枝は酔いの回った頭で、そう思う。
男ばかりの部員たち、特に西浦は人数が少ないから、百枝の目が届くのだ。

百枝が確信しているのは、水谷が篠岡を好きであること。
そしてその篠岡は阿部が好きであることだ。
だがその阿部が誰を見ているのかと考えると、少々気分が重くなる。
阿部は間違いなく三橋を見ており、三橋の阿部への信頼も並々ならぬものがある。
BL風に言うなら「フラグが立っている」とでもいう感じかもしれない。

ではこの2人の関係はと問われれば、百枝にも正確なところはわからない。
バッテリーであるだけだと言うと、それだけじゃないと思う。
では恋愛関係かと言うと、まだそこまではいっていないという気がするのだ。
ちなみに応援団の浜田と泉を見ていても、同じような雰囲気を感じる。

「そういうのって青道の方が多くないですか?人数も多いし、寮生活だし。」
「え〜、ないない!うちはないよぁ!」
「・・・そうですか?」
「誰かそんな感じのヤツら、いた?」
「ええと、御幸君と沢村君、とか。」

百枝は率直な感想を口にした。
何となく阿部と三橋を見ていて感じる雰囲気を、彼らも持っているような気がしたのだ。
すると高島は「う〜ん」と首を傾げている。
だけど百枝はその表情に、あながち自分の読みが外れていないことを知った。
おそらく高島も何かを感じているのだ。

「高校野球って部内恋愛をしたら、不祥事になるのかしら?」
「そんな規定はないと思いますが。。。」
「でも世間にバレたら、いろいろまずいわよね。」
「父兄は騒ぎますね。あと青道はファンも多いから、うちより反発が多そうです。」
「やめさせた方がいいのよね。本当は」
「ええ、何より練習に差し支えるようなことがあったら、困りますし。」

2人の女はそこまで話すと、しばし無言で酒を煽った。
そう、部内恋愛なんてない方がいいに決まっている。
恋なんて余計な感情は、野球をする上ではプラスにならない。
少なくても高校生の彼らは、きちんと恋と野球を分けることなどできない気がするのだ。

「それでもやめさせたくはないです。」
沈黙が下りたテーブルで、百枝はポツリとそう告げた。
すると高島も「そうね」と頷く。
人に言えない、何もプラスにならない恋。
それでも初々しい彼らを見ていると、やめさせるなんてあまりにも無粋な気がするのだ。

「ビール、大ジョッキ、2つ追加!」
重い雰囲気を断ち切るように、高島が店員を呼び止めて、叫んだ。
百枝も「あと唐揚げ。それとほっけの塩焼き!」と声を上げる。
高島が「まだ食べるの?」と呆れているが、百枝は「当然です!」と答えた。

決して楽しいだけではない高校野球。
それでも2人の女は、その魅力にすっかりハマっている。

【続く】
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