「おお振り」×「ダイヤのA」

□3日目、全日程終了!
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「今日はよく投げたんだから、もういいんだよ」
阿部は呆れたようにそう言うと、三橋のフワフワした髪をサラリとなでた。
沢村はその瞬間、思わず御幸を盗み見ていた。

今日、何度も思ったことだ。
阿部の三橋へのベタベタとした過保護っぷりは、少々行き過ぎだ。
何だか甘ったるくて、胸焼けがする。
それでも羨ましいと思うのだ。
あんな風に気にかけてもらえて、大事にされたら。
照れくさくて恥ずかしいけど、きっと嬉しい。

それはきっと、捕手を独り占めしたいという感情なのだと思う。
だけどどうにも違う気もするのだ。
自分は絶対にエースになりたいし、なれると信じている。
だけどこの感情は、その延長線上にない。
エースではなくても、大事にされたいと思う。
それに捕手なら誰でもいいわけではない。
例えばクリスや小野にされると想像すると、絶対に違うと思うのだ。

阿部は三橋を起こすことを諦め、右腕を掴んで、自分の肩に回した。
田島が「運ぶなら、オレも」と言いながら、三橋の左手を取ろうとする。
だが阿部は「田島はダメだ。栄口、頼む」と近くにいる別の部員を呼んだ。
田島が不満そうに「何でだよ!」と文句を言う。
だが阿部は「お前だとイマニモ何かありそうで怖いんだよ」とバッサリだ。

「じゃあ、行くぞ!」
阿部と栄口は声を掛け合うと、三橋に肩を貸すようにしながら何とか立たせた。
そしてズルズルと引きずるように、バスへ向かって歩き出した。
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