「おお振り」×「ダイヤのA」

□3日目、試合後、投手談義!
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「すごいコントロールだね。」
いつも通り、静かにそう告げた降谷の声には、羨望が滲んでいた。

「最後のPK、自信あった?」
恐ろしい食欲で食事を終えた三橋に、声をかけたのは降谷だった。
PKとは、試合後に阿部が御幸に持ちかけた勝負の話だ。
バッティングティーに乗せたボールを、投球で落とす。
引き分けだった試合に勝敗をつけようとしたあの提案のことだった。
三橋はキョトンとした表情で「じし、ん?」と聞き返した。

「ボールを確実に落とせる?」
降谷は重ねて質問した。
すると三橋は「うん。た、ぶん」と答えた。
その言葉に降谷は瞠目し、川上は「マジ、で?」と聞き返す。
三橋と張り合って、まだ食べ続けていた沢村は箸を落とした。

「すごいコントロールだね。」
いつも通り、静かにそう告げた降谷の声には、羨望が滲んでいた。
決めた場所に確実に投げられるコントロール。
それは投手なら誰でも欲しい能力なのだ。

「降谷君、の方が、すごい!球、早い!」
「あ、川上、さんの、落ちる球、も、すごい!サイド、スロー、カッコいい!」
「沢村君、の、ムービング、も。左、うらやま、しい!」
当の三橋はというと、コントロールを誇る様子はない。
それどころか、青道の投手陣たちの長所を並べ立て、褒めちぎっている。
青道の投手3人は、まんざらでもない気分で頬を緩ませた。
三橋はどう見ても嘘やお世辞をいう人間には見えず、その口からの賛辞には重みがあった。

今までこんなこと、なかったな。
降谷は今までの経験を思い起こして、それを痛感した。
中学時代はチームから遠ざけられていたし、高校では他の投手がライバルだ。
こんなにあからさまに褒められた経験なんかない。
そのことで自惚れてはいけないが、励みにするのは悪くないと思う。
三橋がコントロールのよさに甘えず、他の投手の特性を貪欲に見ているように。

「三橋のコントロールだって、負けないくらいすごいよ。」
降谷は静かにそう言った。
いい気分のお返しは、心からの賛辞だ。
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