「おお振り」×「ダイヤのA」

□3日目、試合後の一幕!
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「オレ、まだまだ、強くなる、です。だから、今、見られても、かま、い、ません!」
やる気満々の三橋が叫ぶ。
御幸はそれを見て、これは分が悪いと思った。

阿部の提案は、まさかの投球PK対決だった。
バッティングティーの上に乗せたボールをピッチングで落とす。
これに関しては、西浦が断然有利だと思う。
三橋の生命線はコントロールであり、その1点に絞ったら青道の投手3人には不利な勝負だ。

御幸はチラリと監督の片岡を見た。
片岡はじっと御幸を見ているが、何も言わない。
つまりここは判断をまかせてくれているということだろう。
だが難しい顔をしているということは、この勝負を歓迎していないということだ。

それにしてもコイツ、人が悪い。
御幸は阿部を見ながら、そう思った。
試合は引き分けに終わったが、最後に勝ちを拾いたい。
そんな思いで、このピッチング勝負を挑んできたのだろう。

御幸はまず降谷を見た。次いで川上、最後に沢村。
降谷はやるならやってやるという顔をしている。
川上はどこか自信なさげだ。
そして沢村は泣き笑いのような表情だ。
自信はないけど、やるしかない。
そんなところだろうか。

「その勝負は棄権する。西浦の勝ちでいい。」
御幸は肩を竦めながら、そう答えた。
本当は悔しいけれど、そんな素振りはおくびにも出さなかった。

勝ち目のない戦いに、投手を出すことはできない。
無駄に自信を失わせることはできない。
この勝負は単なるコントロール勝負で、投手の能力の勝負ではない。
だけどこんな衆人環視の中で負ければ、自信を失う可能性がある。

沢村は不満そうにこちらを睨んでいる。
だが特に沢村は、まだイップスを脱しかけている最中だ。
万が一にもこんなことで負けて、またスランプに落とすことなどできない。

「じゃあ仕方ないっすね。引き分けってことで」
阿部はそんな御幸の思惑をどこまで読んだのか。
ニンマリと人が悪そうな笑顔で頷いた。

【続く】
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