「おお振り」×「ダイヤのA」

□初日、練習後の夜!
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あれじゃまるで恋人じゃん。
沢村は2人の背中を見送りながら、ふとそう思った。

「三橋、一緒に自主練しねぇ?」
夕食後、沢村は三橋を誘った。
最初は御幸が妙に三橋を気にかけているのが、何となく嫌だった。
だが沢村をかばって怪我をしたことで、印象が180度変わる。
そして病院への往復の間、話をしたことで、さらに好感度が上がった。
素直だし、練習熱心だし、何よりも投げることが大好きであることが伝わってくるのだ。

「ゴメ、ン。オレ、明日、試合」
「少しだけ、だよ。オレも明日、先発だし。」
明日が先発なのでとことわろうとした三橋を、沢村がさらに誘う。
すると横から別の人物が割り込んできた。

「ダメだぞ、三橋。今日の分の球数はもう投げてる。」
「あ、阿部、君」
「それと今から、明日の配球の打ち合わせ。」
案の定、割り込んできたのは、西浦の捕手、阿部だ。
まるで沢村からひったくるように、強引に三橋の肩を抱き寄せた。
そして沢村に背を向けると、三橋を引きずるように歩き出してしまった。

「沢村、君。また、明日」
三橋は沢村を振り返ると、困ったようにそう言った。
そして「阿部、君、自分、で、歩く」と阿部の手を外そうとする。
だが阿部は「いいから行くぞ」とガッチリ三橋をロックしていた。

「何だよ。少しくらいいいじゃん」
沢村はポツリと文句を言う。
すると阿部が振り向いて、沢村を睨んだ。
タレ目のくせに目つきが悪いという定評の視線に、沢村は怯む。
すると阿部は何事もなかったように、また背中を向けた。

あれじゃまるで恋人じゃん。
沢村は2人の背中を見送りながら、ふとそう思った。
まるで惚れた相手が他の男と喋っているのを見て、嫉妬しているみたいだ。
捕手のことを恋女房なんて言い方をするけど、阿部はまさにそんな感じだ。

御幸はそんな風に沢村を気にかけてくれたことなんかない。
当たり前だ。青道のエースは降谷であり、リリーフには川上もいる。
残念ながら沢村のポジションは3番手なのだ。

「明日は負けねーぞ!」
沢村は気合いを入れると、1人で自主トレをすることにした。
とにかく目の前の試合に勝つこと、今はそれだけだ。
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