「おお振り」×「ダイヤのA」

□初日、投球練習!
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「なぁ、三橋の球、受けてもいい?」
投球練習が終わるなり、御幸が阿部に迫っている。
それを聞いた青道の面々は「はぁぁ?」と声を上げていた。

「10球。いや5球でいい。」
「ええ〜!?それならオレの球、捕ってくださいよ」
すかさず沢村は、その会話に割り込んだ。
その後ろでは降谷ももっと投げたいオーラを発動している。
だが御幸は「お前らのは、いつだって捕れるし」と軽くいなしてしまう。

「すみませんが、明日はこの合同練習中は、球数制限してるんで。」
阿部は素っ気なくそう答えた。
そもそも無理な注文なのだ。
この合同練習中に、御幸とは試合で対戦することになる。
そんな相手にわざわざ球スジを見せるなんて、ありえない。

「やっぱりダメかぁ」
「ダメですよ。三橋、終わりだぞ。」
阿部は御幸の申し出をきっぱりことわると、モノ欲しそうな顔の三橋に釘を刺した。
基本は投げたがりの三橋は、相手が誰であれ、もう少し投げたいのだ。

「じゃあ先にグラウンドに行きますんで!」
阿部は三橋の肩を抱くようにして、さっさとブルペンを出て行く。
まだ投げたいと思いながら、のんびりとタオルで汗を拭いていた三橋は「うわ、わ」と声を上げる。
そして半ばひきずられるような勢いで、連行されていった。

「過保護だなぁ」
御幸はブルペンを出て行く2人の見送りながら、苦笑する。
だがそれを見ている沢村は、何とも言えない気分になった。
今までにもう数えきれないほど、御幸のミットに球を投げ込んできた。
だけど試合以外は決められた練習か、または沢村が捕って欲しいと頼んだときだけだ。
御幸の方から投げてくれと頼まれたことなんかない。
あの遅い球のどこに、御幸にそこまで言わせるだけのものがあるのか。

何だ、この気持ち。
沢村は自分の気持ちがよくわからずに困惑する。
なぜ三橋なのか、なぜ自分ではないのか。
焦るようなこの気持ちは、一体なんだ?

その気持ちの正体は嫉妬。
沢村が気付くのはもう少し先のことだ。

【続く】
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