「おお振り」×「ダイヤのA」

□再び合同練習、その7!
1ページ/2ページ

「気にするな!出会い頭のまぐれだ!」
マウンドに駆け寄った阿部は、三橋に声をかけて、肩をポンポンと叩いた。
三橋は落ち着いた表情で「だい、じょぶ!」と答えた。

西浦と青道、Aチームの試合は5回。
スコアは2対0で、西浦がリードしていたのだが、今青道に1点が入った。
前園のソロホームランだ。
これで2対1、まだどちらが勝つかはわからない。

ホームベースを踏んだ前園にも、阿部の言葉は聞こえた。
出会い頭、まぐれ。
思わず不機嫌な表情になった前園だが、外れてはいない。
完全に裏をかいて、ツーストライクまで持ち込んだ。
だが最後、半ば自棄で振り回したバットにいい感じで当たってしまったのだ。

「絶対、勝とう!」
三橋は阿部にきっぱりとそう言った。
だが内心は、悔しいはずだ。
当たったのはまぐれでも、スタンドまで運ばれてしまったのだから。
阿部はミットを外すと、左手をそっとかざす。
三橋はそれに右手を合わせた。
西浦の面々からは「お手」と呼ばれる、2人のコミュニケーションだ。

「そうだな。勝つぞ!」
阿部は三橋の肩をポンポンと叩くと、ホームに戻った。
何だかんだ言っても、三橋は切り替えがうまい。
そして後続の打者を打ち取って、1点止まりで押さえた。

「いいぞ、三橋!」
ベンチに戻ると、阿部は三橋にタオルを渡す。
そして三橋が汗を拭き終わったところで、スポーツドリンクを渡してやった。
チームメイトが「過保護」と言っていることは知っている。
だが言いたいヤツには、言わせておけばいい。

阿部にしてみれば、こんなことしかできないのがもどかしいのだ。
打たれれば、見ている人間はどうしても投手の責任だと思いがちだ。
さっきの出会い頭のホームランだって、自責点は三橋につく。
だからせめて、少しでも投げやすくしてやりたいと思うのだ。

だから絶対に勝つ。まずは追加点だ。
阿部は改めて固く決意し、青道のベンチを見る。
そして同じようにこちらを見ている御幸と目が合った。

ここまではこっちの勝ちですよ。
阿部はそんな思いを込めて、御幸から視線を逸らさなかった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ