「おお振り」×「ダイヤのA」

□さらに後日談、その3!
1ページ/2ページ

「ここ、どこ?」
三橋はキョロキョロと辺りを見回しながら、聞いてみる。
だが沢村も三橋と同じことを思っているようで、困ったような顔をしていた。

プロ野球の試合を見た後、球場横のグッズショップで土産物を買った。
そして田島と泉が待つゲームセンターに行こうとしたところで、からまれたのだ。
どうやら彼らは、沢村の顔を知っていたらしい。
三橋には、沢村を挑発して揉め事を起こさせようとしているように見えた。

多分、甲子園に出場する青道高校を妬んでのことだ。
その証拠に、彼らはやたらと青道高校と沢村の名を連呼する。
出場辞退に追い込むのが目的なのだろう。
三橋は冷静にそれを理解し、そして怒っていた。
野球選手の勝負はグラウンドでするべきだ。
こんなところで嫌がらせをするなんて、許せない。

「沢村、君。走る、の、得意?」
三橋は沢村の耳元で、そっと囁いた。
沢村は「誰にも負けねぇ!」とデカい声で聞き返してくる。
そういえば練習試合の時も、沢村は夜中までタイヤを引いて走っていた。
三橋はそのことを思い出して、余計な心配だったことを悟った。

「じゃあ、逃げ、よう。」
「何で!?」
「甲子園、行く、ん、だろ?」
三橋の潜めた小声に対して、沢村はウンザリするような大声で答える。
思わず反射的に耳を塞ぎながら、逃げることを提案した。
負けず嫌いの沢村は逃げたくないようだったが「甲子園」の威力は絶大だ。
ようやく声のトーンを落として「お前は走れるのかよ」と言った。

「1500、走、は、2位、だよ。1位、は、田島、君!」
「わかった。じゃあ行くぞ!」
沢村がいきなり彼らに背を向け走り出し、三橋はその後に続いた。
からんできた連中は「待て、コラ!」「逃げるのかよ!」と叫ぶ。
だが沢村と三橋は、人混みの中をスラロームしながら、とにかく走った。
しばらくはバタバタと足音が追いかけてきていたので、何度も角を曲がり、全力で駆け抜ける。

「逃げ、切った?」
力尽きた2人はようやく足を止め、壁にもたれかかって、ハァハァと荒い息を整える。
そうしながら、周囲を見回し、耳を澄ました。
追って来る者もなく、不審な足音も聞こえない。
どうやら逃げることに成功したようだ。

「お前、足早いな!」
「沢村、君、も!」
ようやく息が整った2人は、視線を交わして笑顔になる。
だが次の瞬間、とんでもないことに気付くのだ。

「ここ、どこ?」
三橋はキョロキョロと辺りを見回しながら、聞いてみる。
だが沢村も三橋と同じことを思っているようで、困ったような顔をしていた。
どうやら逃げ切ることに必死で、完全に迷子になってしまったのだ。

「田島、君、たち、に、連絡。。。あ!」
「どうした?」
「ケータイ!田島、君、たちに、カバン、預けた、まま、だ!」
「オレもだ!」

2人は顔を見合わせて、呆然とした。
どこだかわからない場所で、携帯電話もない。
期せずして、とんでもない危機に陥ったのだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ