「おお振り」×「ダイヤのA」
□後日談、その5!
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「へへへ」
沢村は携帯電話で送られてきた画像を見ながら、笑っていた。
そしてその行動は、青道高校野球部にちょっとした波紋を巻き起こした。
正月三が日を過ぎ、青道高校野球部の寮に部員たちが戻り始めた。
そして監督、部長、副部長が戻った5日から、自主練も解禁だ。
その中にはもちろん沢村もおり、今日も賑やかに練習をしている。
御幸ももちろん、新年の初日から自主練開始だ。
今年の目標は全国制覇、気合い充分だ。
何より主将であるのだから、率先して練習するべしとも思っている。
正月休みに鈍った身体を、慎重にならしていく。
それは心地よい感覚だった。
だが1人だけ全開の男がいた。沢村だ。
御幸は投球練習に付き合ったが、新年早々なかなかいい球を投げている。
しかも無理して飛ばしているのではなく、本当に調子がよさそうなのだ。
そのことに御幸は怪訝に思った。
なぜなら沢村は今年、実家に戻らなかったと聞いていたからだ。
年末年始、この寮では自主練は禁止になっていた。
そのことは事前に部員に通達していたのだが、沢村はすっかり忘れていたらしい。
御幸は「相変わらずバカだ」と盛大に笑い飛ばしてやった。
だが実際、寮に残っていたとしたら、ずっと身体を動かしていないはずなのだ。
それなのに沢村の投球からは、ブランクなど少しも感じられなかった。
毎日投げ込んでいなければ、こんな風にはいかないはずだ。
「お前、やっぱり帰省したのか?」
投球練習を終えるなり、御幸は沢村にそう聞いた。
だが沢村は「帰ってないっすよ」と澄ました顔だ。
そして「充実した正月休みを送りました」と意味あり気に笑ったのだ。
こいつ、バカのくせにムカつく。
御幸は少々気に入らなかったが、それだけのことだった。
どうせ結局帰省して、昔の仲間相手に練習していたのだろうと思った。