■Novel(ファンタジー)

□再会
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 アオイは完全に帝国と闘う決意を固めている。それを確信し、僕はそれ以上言葉を発する事が出来なかった。ライアもライアで僕らニンゲンの問題に口を挟むようなことはしなかった。
「ルビア。君とも、闘う事になる・・・」
 そう言われてはっとした。回避策はないのか。瞬時に思考を巡らせるが良案が浮かばない。途方に暮れていると突如として魔力の風が吹いた。
「マスター」
 不思議な声音の男の声。風が止み、その声の主が明らかとなった。
 眩しいほどの金色が印象的だった。髪も睫毛もその下に見える瞳も。明るい金の光を帯びていた。僕よりもさらに小柄かもしれないその体からは、異常なまでの魔力が溢れ出ていた。僕は彼を知っている。アオイと共に姿を消した存在。ほんの数秒だったが、確かに見たのだ。彼は、神龍だ。
「お前、神龍か?」
 言ったのは魔王ライアだった。神龍と思われる青年は何も喋らない。ライアがあざ笑うようにその表情に笑みを浮かべた。
「随分弱ってるみてえだな」
「弱っている?これで?」
 彼から感じられる魔力は宝玉を体内に宿す僕ですら足元にも及ばない。だが、確かに顔色もあまり優れないように見えたし、加えて呼吸が荒かった。
「シン、いいから。下がってて」
 シン、と言うのが神龍の呼び名らしい。共に姿を消して半年。アオイと神龍・シンはどのような時間を過ごしていたのか。
 大の男が4人。何やら集まってもめているのは異様な光景だったのだろう。遠巻きに村人たちが集まってきていた。その誰もがアオイやシンの事を心配している事は僕にも伝わってきた。彼らは既に村の一員となっているのだと分かる。そろそろ引き際だろうか、そう思ったとき、またも魔力の風が吹いた。
「何だぁ?えらい面子だな」
 楽しそうに笑いながら現れたのは黒髪黒目の青年。僕は彼の事も知っている。
「暗黒龍か・・・。この村はいったいどうなってるんだよ」
 呆れたように言ったライアに僕も同感だった。史上最年少元冥師と龍族が2人。加えて現役冥師の僕に魔族の王ライア。ルルネアに残ったファナが聞けば卒倒しそうだと暢気なことを考える。
「これはこれは魔王陛下とそのご主人様。遠路遙々ようこそクラスレスへ」
 からかうような口調に、ライアの眉間に皺が寄る。彼は人をからかうのは大好きだが、からかわれるのは嫌いらしい。いつ手を出すかと内心ハラハラする。と、暗黒龍と目が合った。彼は、へぇ〜、と意味ありげに僕とライアを交互に見た。その舐めるような視線に何処か居心地の悪さを感じる。
「そう言うことね」
 これまた意味ありげに呟く。
「お盛んなことで」
 そう続けられて、初めて意味を理解した。僕とライアがそう言う関係を持っている事を、暗黒龍は勘付いたのだ。なぜ分かってしまったのかと少し焦る。そう言えば、昨日は簡易テントの中で行為に至った。当然、自宅や宿のようにシャワーがついている訳はなく、後の処理は濡らしたタオルで身体を拭う程度しか出来なかった。半ば名残の残った状態の僕らの身体。人間の数倍鼻の利く龍族である彼にはまる分かりと言う訳だ。他人に知られると言うのは何だか恥ずかしい。しかもそれを知ってニヤニヤと笑みを浮かべられれば尚更だ。赤面する僕に対し、ライアは相変わらず嫌な顔をしていたが動揺する様子は見られなかった。何だか悔しくて、僕も冷静を装うことに徹した。
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