企画・記念小説置き場

□熱を分かち合う *
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【熱を分かち合う 47000hitキリリク】


キュッ、キュキュッ…

 体育館にシューズで駆ける音が響く。

 ダムダム、ダム…キュッ、……パシ

 弾むボールを何人もの男子生徒が追いかけ、逃げ場を失った少年は素早くチームメイトにパスを繰り出す。体育の授業中、僕、桐原幸也はそんな光景をぼーっと眺めていた。
 朝起きると身体がずしりと重かった。登校時間ぎりぎりまでベッドの中で粘っていた僕を不審に思ったのか、ルームメイトで現在恋人の須藤流樹、通称りゅうりゅうが今日は休めと言ったが、一日休むだけでもノートを写したりプリントを後でやったりと面倒なので彼の制止も聞かずに登校した。午前の授業は何とか持ち堪えたが、昼休みを挟んでからは一層身体がダルくなってきた。現在5限の体育。流石に見学する事にした。後日、ペナルティとしてグランドを5周走らされるが、それには目を瞑る。本当に辛いんだもん。
 何がいけなかったのだろう。昨夜はりゅうりゅうと激しく触れ合ったわけでもない。というか、流くんは隣りにバレるかもしれないだろうと殆ど僕に触れてこない。…へたれめ。

「あ〜…」

 もうすぐ夏だというのに何だか肌寒い。顔だけがほくほくと熱を持っていて頭がぼーっとする。本格的に熱が出てきたのかもしれない。ふらつきながらも立ち上がり、辺りを見渡す。壁沿いに視線を動かし見つけた扉を開けると、そこは用具倉庫。跳び箱やバレーボール、卓球台、体操マット。あらゆる道具が仕舞いこまれていた。ぶるりと一度身震いをして倉庫の中に足を踏み入れる。
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