■Novel(ファンタジー)

□新たなるスタート
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 冥師襲名試験に合格して上級術師から冥師と言う最高位の称号に代わり、早ひと月近くになる。
 冥師の仕事は今までの術師の仕事と大差はなく、相変わらずの生活を送っていた。変わったことといえば、権限。公共の施設や交通手段などの料金が掛からなくなり、更に人々から集める信望もその大きさを飛躍的に伸ばした。
 とは言え、やはり冥師ならではの仕事もあるらしい。それが明後日に控えている。何でも、重要な行事らしく、半年に一度、帝国各地に散り散りになっている全冥師がその顔を集めると言う。今回が初参加と言う僕にもたいした説明もなく、ただ、時間通りに帝国最大の礼拝堂まで来いとの事だ。
「・・・ふぅ」
 漏れたため息。見上げたガラス越しの夜空には、真ん丸い月が浮かんでいる。したためていた書類は、今日討伐に出た魔獣についての報告書。その前に書いていたのは冥師襲名試験の報告書であった。
 召喚術の失敗と、魔人・魔獣への警戒強化。大事には至らなかったものの、もしもまたあのような事が起こればと考えると、何か対策を考えなくてはならない。冥師襲名試験の受験資格を持ったものはそうそう現れるものではない。だが、もし一般任務中にあのようなことが起これば、
地上での被害はどれほどになるだろう。知らず知らず寄せられていた眉根に、またため息が出る。
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