■Novel(ファンタジー)
□無い物ねだり
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【無い物ねだり】
僕は最近、自分の寿命について考える事が多くなった。
人の寿命は、と聞かれれば、国や種族によってまちまちだがある程度のデータがある。では、魔族の寿命は、と聞かれれば、僕は何も答えられない。
魔族の平均寿命ってどれくらい?魔王は一体、いくつまで生きるの?
じゃあ、僕は…?
そんな事を自問自答する。魔族の寿命は人の数倍と言われている。魔王は更にそれ以上の時を生きると書物には記されている。魔族と人間のハーフに至っては資料がない。
僕の身体は確かに魔族に近付いた。魔力だって強くなったし、体力もついたように思う。だが、それでもハーフはハーフ。魔族にはなれない。
さあ、僕はいつまで彼と一緒にいられる…?
僕は確実に彼よりも先にこの世を去るだろう。残された彼は、僕とは違う他の誰かと再び恋に落ちるだろうか。もしそうなれば、次の相手はきっと女性だ。その人には、僕には出来ない事が出来る。
僕とは違う誰かと、彼との間に新しい命が生まれる。僕にはどう足掻いてもしてあげられない事だ。
でも、神様。
どうかその時は、その生れ落ちる子供の何処かに、僕の面影を残して欲しい。僕の面影を残して欲しい。
ねぇ、神様…
「ルビア」
「ん?」
覆い被さる男に呼ばれ、僕はそっと目を開いた。
「他の事を考えてるなんざ、結構な余裕ぶりだな」
少し苛立ったように言われ、僕は苦笑い。
「ライアの事を、考えてたんだ」
「…どうだかな」
珍しく拗ねている彼の唇に、僕自らキスをした。少し驚いたようだったけれど、すぐにそれは深いものへと変化する。既に汗ばんでいるお互いの肌をぴたりと合わせ、徐々に呼吸を荒げならが、僕等はそこにある“愛”を確かめ合うんだ。
【END】
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