■Novel(ファンタジー)
□僕と彼の差
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【僕と彼の差】
温かな腕の中、僕はぽつりと呟いた。
「アオイたち、どうしてるかな」
その言葉は独り言のつもりだったが、僕の隣にいたライアはさぁな、と答えた。
アオイたちを捕らえるべく軍隊が派遣され、それと彼等がぶつかる戦乱の中、アオイたちは姿を消した。それから彼等を見たという情報は一切入ってこなくなった。
無事に逃げ切れたならいい。帝国も今は変革の時代。ばたばたとしていて国外にまで捜索の手を伸ばす事はない。彼等がこの世界の何処かで、幸せに暮らしてくれればいいんだ。けど、やっぱり今、どうしてるんだろうとふと思ってしまうんだ。
地方に仕事で出向いた時、アオイに似ている人物を見つけると、つい目で追ってしまう。
「また会ってみたいか?」
「そうだね。会ってみたい」
ライアに問われ、素直に答える。
回された腕にそっと触れ、ぬくもりを求めて擦り寄った。
「別に世間話をしたい訳じゃなくて、純粋に彼と戦ってみたい」
「ほぉ。随分と物騒な事を言うな」
耳元でくつくつと笑われ、くすぐったい。
「アオイはこの国一の術師だったから。僕も彼に追いつきたいって、純粋に思うんだ」
「そうか」
僕の恋人はあまり深くは問わず、僕を抱きしめる腕の力を強めた。
「時々考える。僕と彼の力の差って、どれくらいかなって」
そう言って瞳を閉じた。もうライアは答えない。僕もそれ以上睡魔に逆らう事を止め、まどろみの中に堕ちていった。
【END】