■Novel(ファンタジー)

□同じ時間を歩きたい *
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 目の前にあるのは想い人の寝顔。情事の後、ライアは珍しく僕の隣で眠りに落ちた。魔族も睡眠をとるんだなあと変に感嘆してしまった。紅く燃えるような瞳は今は伏せられ、いつもよりも柔らかい印象を受ける寝顔に思わず見惚れた。
 褐色の肌にうっすらと浮かんだ汗から名残が窺え、彼から感じられる色気、と言うものに赤面するのも仕方がない。そう自分に言い聞かせ、薄手の掛け布団を被り直す。腰の痛みや局部のひりつき、身体の気だるさ。そのどれもが彼と繋がっていた事の証だと思えば愛おしい。
 目を閉じ、近くに感じるライアの温もりに縋るようにして、僕も眠りについた。

◇ ◇ ◇ ◇

「起きろ」
 誰かが僕の肩を揺すって、そう言った。誰だろう。覚醒しきらない意識で考える。
「いい加減にしねえと、襲うぞ」
 その一言にガバリと勢い良く飛び起きた。
「おっ、おはよ・・・」
 そう言えば、昨日は彼と一緒に眠りについたのだった、と思い出す。
 僕が起こされた理由は朝食の準備のため。せかされながら簡単な朝食を作り、テーブルに並べる。皿が置かれたそばからそれに手を伸ばすライアに静止の言葉を告げるが、不満の声を上げられただけで彼は先に朝食を済ませてしまった。彼が半分以上食べ終わった頃、僕もやっと食事にありつく事が出来た。
 食事を終えたライアの元に、今まで様子を伺っていたかの様な絶妙なタイミングで使者がやって来た。魔王の配下の魔獣らしく、人語を話した事に僕は酷く驚いていしまった。魔族と契約をした魔獣の特権らしい高度な知恵と魔力のおかげらしい。いつかそれについての論文でも纏めてみようかなどと考えていると、ライアががたりと席を立った。
「行ってくる」
 どうやら使者はライアに何かを伝達に来たらしく、その用件で出て行かなくてはならなくなったようだ。
「うん。行ってらっしゃい」
 言ってから、少し恥ずかしさでくすぐったくなった。真っ黒な四肢を持つ魔獣と共に姿を消した魔王を見送り、僕は朝食を再開した。
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