■Novel(ファンタジー)

□再会
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 穏やかな村だった。ぐるりと村の周囲を囲む大きな防壁は森から切り出した木材で作られ、自衛の精神が窺えた。村人達の姿がここそこに見られ、その誰もが生き生きとした表情を浮かべている。本当にいい村だと思った。
 畑の集結した場所のあぜ道を歩いていた時だった。畑を耕す夫婦の会話が聞こえてきた。
「今日はこの野菜をアオイさんに持っていきましょうか」
「そうだな。よく出来ているから少し多めに持って行こう」
 アオイ、と言う名前にどきりとした。やはり彼はこの村にいるのだろうか。それとも単なる同名の別の人物だろうか。でも、僕はそれが彼本人であると、頭のどこかで確信していた。
 再会の時は突然だった。
 民家の角を曲がった時、ひとりの人物と鉢合わせた。それが、アオイだった。
「・・・・ル、ビア・・」
「お久しぶりです。アオイさん・・・」
 彼が動揺しているのが手に取るように分かった。彼がこうも心を乱しているのを見るのは初めてかもしれない。
「1月以上前だったかな。帝国兵が村へ来たよ。君も僕を・・・連れ戻しに来たの?それとも、消しに?」
「いえ。今回は消息を確認しに来ただけです。でも、僕がその報告をした後、確実に別部隊が編成されるでしょう」
「そんな事を僕に言っていいの?僕は、逃げるかも知れない」
「それでいいです」
 どちらかと言えば、逃げて欲しかった。遠くへ、遠くへ、帝国の目の届かない場所まで逃げてもらいたかった。
「そう・・・。まあ、ここが見つかるのも時間の問題だとは思っていたけど。でも、ここはクラスレスだ。帝国の言葉は受け付けないよ」
 アオイがそう言った直後、僕の隣りに突然魔王が現れた。彼の出現にアオイの表情が硬くなる。
「オイ、坊主。捕まりたくなかったら、素直にここから出て行ったらどうだ」
「そうしたところで、帝国は必ずこの村へ来る。その時、ここの人たちに被害がないとは限らない。むしろ、帝国はこの村ごと消そうとするかも知れない。ルビア、君も知っているだろう?帝国は更なる領土拡大を企んでいる。そのために邪魔なのがこのクラスレスの存在だ。これを機会にと、必ずクラスレスの村や町を攻撃し始める」
 彼の瞳は史上最年少冥師として名を馳せていた頃の力強さをそのままに宿していた。確かに、彼の言葉を否定出来ない。帝国は、きっとこの村を潰しにやってくるだろう。
「ならば、僕は帝国兵をクラスレスの手前で迎え撃つ」
「・・・僕が、内部から出撃を食い止めてみる」
「新人冥師の言葉を、あのマセン冥師や帝王が聞くとでも?」
「やってみないと分からない!」
「分かるさ」
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